近いうちニューヨーク・ダウが大きく下落する可能性について 〜ダウは毎年、この時期必ず1000ドル以上、下落している〜

 先週、日経平均株価は1日に1000円以上下落し、更に今週に入っても月曜に400円以上下落するなど、ここに来て明らかに調整局面に入っています。但し、この下落は、本来なら、2月の途中から3月末にかけて下落する筈のものでした。

 というのも、以前にも申し上げたように、2月の途中から3月末にかけて、為替が調整局面を迎え、一旦96円台まで進んだ円相場は、この時期、ジリジリと円高になっていったのです。そしてそれに伴い、海運・鉄鋼・機械・商社・自動車、といった輸出関連銘柄もまた、株価の下落局面に入っていたのです。

 ところが、これら主力の輸出株が下落していったにも拘らず、日経平均そのものは上昇を続けました。その主役は、不動産であり、また含み資産系の倉庫・鉄道・レジャー・ホテル、などのところです。これらの業種は、いずれも多くの不動産を抱えているので、まあ全部ひっくるめて不動産関連銘柄といっていいと思います。

 これら内需系の銘柄の上昇は、主力の輸出企業の下げをはるかに上回るものであり、それにより、この時期、日経平均株価自体も、上昇していたのです。もちろん、それ以外にも上げていたセクターはあるわけで、たとえば、リストラや資産の売却などをするだけでで、いったいどうやって経営を立て直すのか、何で稼ぐのかがまったく見えてこないソニーパナソニックといった不振の電機産業の株もまた、訳の解らない株価上昇にありました。

 円高の進行とともに、トヨタ・ホンダ・日産・コマツ三菱商事新日鉄住金川崎汽船、などが軒並み株価を下げる状況において、そんなことに関係なく日経平均は上がっていく、こういう事態の方こそむしろ異常というもので、これはいわば調整局面の先送りをしたようなものであり、そのぶんどこかで下落するのではないか、ということは当然あったわけです。

 いかなる上昇相場であろうと、ひたすら右肩上がりで株価が上昇するなどありえないのであり、一定程度の調整は必ず孕むものです。

 ちなみに、日経平均の主力を為すトヨタなどが下げに転じていたこの時期、深センや香港の株価も調整局面を迎えていました。深センは4月上旬、香港は4月半ばまで調整し、その後再度上昇していったのです。

 また、いまでこそ絶好調のヨーロッパ株ですが、こちらも春先は調整局面を迎えていまして、たとえばドイツDAXは、3月半ばから4月下旬までずっと下落していたのです。ドイツ株は、日本がゴールデンウイークに入る少し前から突然切り返し、そして5月に入ると一気に上昇ペースを加速させ、次々に史上最高値を更新していったのです。

 そんななか、いまだに目立った調整もなく、わが世の春を謳歌しているところがあります。それは、ニューヨーク・ダウです。ダウ平均は、目下のところ絶好調の極みにあります。

 ちなみに、ニューヨーク・ダウの絶好調というのは、何も今年に入ってから始まったことではありません。ダウは、2009年の春以降、毎年一度の調整局面を迎えながら、ほぼ一本調子で上昇してきたのです。リーマンショックにより急激に下落が始まったダウ平均は、2009年の3月に7000ドルを割るところまで落ちたのですが、4月から反転しまして、それ以降、いまに至るまで持続的にグングン株価を上げてきているのです。

 但し、いくら持続的に株価が上昇してきたといっても、毎年必ず調整局面は迎えています。そしてその時期は、決まっているのです。ニューヨーク・ダウは、過去3年間、毎年5月下旬から夏の時期にかけて、必ず下落しているのです。

 その下落幅ですが、2010年はおよそ1400ドル、2011年はヨーロッパの債務危機の深刻化と重なったこともあって下落幅も大きく、およそ2200ドル、そして2012年は、およそ1100ドル、それぞれ下落しています。

 2011年に関しては、ヨーロッパの債務危機がなければ下落幅もそのぶん少なかったでしょうから、それを考慮すると、ダウはこの時期、毎年1000ドル超の下落をして株価の調整をし、そしてその後、再び上昇に転じるということが言えます。

 何故この時期ダウは下落するなのか? それは色々と要因があるでしょうが、1つはっきりしていることとして、リーマンショック以降のアメリカというのは、毎年5〜7月のいずれかの時期になると、国内の経済指標で物凄く悪い数字が出てくるのです。リーマンショック以降、アメリカの景気というのはパターン化していまして、毎年年初から春にかけてはそれなりに良い数字が出てくるものの、日本で梅雨にあたる時期が来ると、突然ガクンと落ちるんです。そして夏が深まるとまた元に戻る、ということが繰り返されています。

 という訳で、今年もこれが起きるということは当然警戒すべきです。そもそも、ヘッジファンドの売買というのも、機械化が進んで高度に精密になってきていますし、もとより目立った調整局面もなく株価がひたすら右肩上がりで上昇し続けるというのは、危険以外のなにものでもないので、ファンドの側としても、当然どこかで調整的な売りを出す筈です。

 問題は、仮にダウが一旦調整局面に入り、下落する日が続いたとして、それが東京市場にどう影響するのか、ということです。過去数年間において、日経平均株価はダウとはまるで連動しておらず、世界の主要株価指数のなかで日経平均と最も連動性が高かったのは上海総合指数でしたので、ダウが上がろうが下がろうが、それが日経平均に与える影響は皆無と言っていいものでした。

 ところが、今年は違います。日経平均とダウ平均は、一緒に上がってきたわけです。但し、日経平均は既に調整局面を経験していますし、そして東証1部の主要な買い手は外国人投資家ですので、彼ら外国勢が、自分で売って下落させたダウの値段に動揺することはまず考えられませんので、そう思えば、東京への影響も限定的、もしくはまったくないかもしれません。

 ちなみに、言うまでもなく、今年に関しては、ダウは大きく下落しない、という可能性もあります。但し、その場合は、どこかで反動が来ると考えられるので、かえって危ないと言えます。という訳で、市場関係者にとっても、そして何より世界経済にとっても、ニューヨーク・ダウもこのあたりで一旦調整局面に入った方が、先行きにかけては安心というものです。