アベノミクス、ついに終わりの始まりか? 日本株への投機筋の攻撃、収まる気配はまるでなし

1月23日から始まった株価の下落、いまだまったく収まる気配はなく、依然として東京市場は大混乱のさなかにあります。週明け初日の2月3日、日経平均株価は295円安の14619円となり、今年の安値を更新しました。ちなみに、市場関係者の間の多くは、昨年7月以降何度となく上値抵抗線となっていた1万4800円がいまや下値抵抗線であり、ここを突破して下落することはないのではないか、という意見がかなり多かったのですが、しかし節目とされた1万4800円の防衛ラインはあっさりと破られ、株価の下落はまったく歯止めがかかりません。そうである以上、先物の方はもっと値を下げ、1万45600円まで下げています。

これにより、年初からの日経平均株価の下げ幅は、ついに10%を超えました。

「世界中見渡しても、日本ほど株価が下落している国は見当たらない。これはもう異常事態です」。

投資間向けの番組「アクロス・ザ・マーケット」における岡村友哉さんの相場解説は、この言葉から始まりました。以前から申し上げているように、新興国不安からの世界的な株安と言いながら、実際のところ日本株の下落幅は突出しているのです。一方で、為替はそれほど動いていません。この3日に関しては、朝方102円を割り込んで101円台に突入したものの、しかし東京市場の取引が始まると若干ながら為替は円安方向へと動いたのですが、しかしそれにもかかわらず、株はひたすら売られるという始末だったのです。

「金曜日のナイトセッションを見ていた人なら解ると思いますが、為替とか関係なく、日経平均先物がバンバン売られるわけですよ」。

「東京の場合、メイン市場はもちろん昼の筈なんですが、しかし意志をもって動いているのは、このロウソク足が大きくなるのはナイトセッションの方で、こちらで大きくなっている」。

ヘッジファンドに関しては、夜間の取引で先物が下げると、もちろん日中は下げて始まることが予想されるわけですが、それを見越して利食いを狙って、積極的に日本株を崩そうとしている」。

以上はいずれも、岡村さんの解説ですが、もはや主体となっているのは完全にシカゴの先物市場などのナイトセッションで、そこでヘッジファンドが積極的に日本株を崩しに来ているとい見方、これは先日紹介した瀬川さんの見解、「東京株式市場は、投機筋の攻撃に曝されている」ということと一致します。

さて、先物主導で下げている以上、指数への寄与度の高いソフトバンクファーストリテイリングといった銘柄はどうしても下げがきつくなるのですが、こういう目立つ銘柄はこのような局面においてはとりわけ狙い撃ちされやすいものです。しかし、それはさておき、ここはまず冷静に、業種別騰落率を見てみましょう。全面安となった以上、33業種すべて下落したのですが、それにしても、特にどの業種が大きく下落したのか、それを知ることは相場を理解するうえでとても重要です。以下は、昨日の業種別騰落率の下落率の上位です。

 1証券・商品    −4・20%
 2その他金融    −4・13%
 3電気・ガス    −3・73%
 4情報・通信    −3・67%
 5倉庫・運輸    −3・05%

株価が下落すれば証券会社の株が売られるというのは誰にでも解ることで、これについて解説の必要はないと思いますが、しかしそれはさておき、見て解るように、見事なほど内需系の産業がズラリと並んでいます。新聞等では、トルコやインドなどの新興国不安から株価が下落していると言いますが、しかし新興国の経済の失速とこれら日本の内需産業がいったい何の関係がありますか? なかでも、地域独占の電力会社などまるで関係ありません。それ以外でも、日によっては不動産とか、保険とか、そういうところが下落率の上位に来るのが最近の相場なのです。

また、個別株で見ると、昨日は不動大手の三菱地所が、「−2・90%」、ゼネコン大手の鹿島建設が「−6・28%」と非常に大きく下落し、市場関係者の目を引きました。

つまり、メディアは新興国発の世界経済への不安と言いながら、実際のところは、不動産、保険、電力、倉庫、といった内需系の銘柄こそ最も下落幅が大きいのです。そして、言うまでもなく、これらこそはアベノミクスの恩恵を受けるとされる代表的なところです。

要するに、アベノミクス関連と呼ばれる銘柄こそ最も株価が下落している、というのが最近の相場の偽らざる姿なのです。

瀬川剛さんは、投資家向けの番組「マーケット・ストリート・ラップ・トゥデイ」において、次のように言いました。

新興国不安というのはきっかけに過ぎず、いま起きているのは日本固有の独自要因からで、それにより相場全体が自己崩壊をきたしている」。

そうなると、この一連の株価の下落は始まったのが、まさにちょうどダボスでの安倍首相の失言があった時期と一致するというのは偶然ですますことは出来ません。また、一方で、この一連の株価下落は、東京都知事選の公布の時期とも一致します。どれだけ関係があるかどうかはともかく、東京都知事選が公布し、選挙戦がスタートしたのと同時に、日本株に対する投機筋の攻撃もスタートした、ということになります。

そして既にご存知の通り、細川候補は、小泉元首相の後押しを受けて、何よりも国政を変えることを最大の主眼として選挙戦を行っているのです。既に元経済企画庁長官の田中秀征氏はおろか、第一次安倍内閣の経済ブレーンであった高橋洋一氏も、細川候補の原発ゼロの政策への支持を鮮明にするなど、国政改革、打倒・安倍の気運は高まりつつあります。

一連の株価急落の背景にいったい何があるのか? それはもちろん推理するしかないのですが、しかし繰り返しますが、アベノミクス関連と呼ばれる銘柄こそ、最も株価が大きく下落している、これは現在の相場の真実です。

市場参加者としては、あらゆる可能性を考慮する必要があります。「日本固有の独自要因から、相場全体が自己崩壊をきたしている」という瀬川さんの指摘、そしてそこを突かれて東京市場が投機筋の猛烈な攻撃に曝されているのなら、現在起こっていること、それはアベノミクスの終わりの始まりではないのか? これは頭に入れておく必要があるかと思います。

一方で、現在はちょうど決算シーズンでもあるわけですが、輸出関連を中心に業績は非常に良く、通期見通しの上方修正をする企業も続々と出ています。株価というのは結局のところ企業業績によって裏打ちされるので、そうである以上、日本株全体が崩れるということはまず考えられません。現在起こっている投機筋の攻撃は、ある特定の要因に端を発するもので、そしてそこで狙い撃ちされている象徴的な銘柄が、アベノミクス関連であるということです。