福島や祝島を本気で支援するために、中国経済についていま我々が考えるべきこと

 ここに来て、原油価格が急速に上昇しています。物凄い上昇率です。

 昨年末に始まった世界同時株高に合わせ、原油価格も急上昇してきたわけですが、しかし2月下旬、ヘッジファンドのなかでも、金融工学の粋を集めたロボットが自動売買するCTAの清算・解体観測が突然市場に流れたことを受けて、原油価格は下落しました。

 このCTAに関する憶測はまったく根拠がないものであり、恰好の調整材料にされた感は否めなかったわけですが、ともかく、一旦落ち着いていた原油価格が、ここ数日急速に上昇しています。リスク資産といえば株式が代表に思われるかもしれませんが、金融商品のなかでも、原油というデリバティヴこそは株以上のリスク資産であり、景気の先行き期待との連動性が高いものがあります。

 翻ると、2月下旬というのは、中国政府が不動産の投機的売買に対する引き締め策を行ったり、また中国人民銀行も金融引き締めを行うなどして、上海や香港の中国株が下落局面に入った時期と一致するものでした。そして中国株は、その後も全人代の開催に合わせて様子見ムードが色濃かったのですが、しかしその中国株は、ここに来て再び上昇気基調へと転じています。

 そして、この中国株の再上昇に合わせるかのように、原油価格も急騰を始めました。

 2月下旬、一旦は1バレル90ドルを切るかどうかというところまで下落したニューヨークの原油価格は、昨日の終値で1バレル96ドル台後半まで上昇し、97ドルを窺う動きを見せています。

 もしこのまま原油価格が、中国株と歩調を合わせながら上昇して1バレル100ドルを突破し、そこに黒田新体制の日銀が大規模な金融緩和を行ったならば、原油高と円安によって、日本国内で物価高が進む可能性があります。下手をすると、スタグフレーションに陥る危険性を孕んでいるとも言えるでしょう。

 既に何度も申し上げて来たように、中国経済は、まさにこれから本格的な拡大局面に入ろうとするものであり、シェール・オイルの動向にも依るものの、中国での需要の拡大は、原油価格の更なる押し上げ材料になることは必至です。そしてそれに併せ、日本の大手輸出企業の株価も更に一段と上昇するでしょう。原油価格が上がると、そのまま日本の大手輸出企業の株価も上昇していくということは、ある程度のトレーダーならば誰でも予想出来ることです。しかしそのことは、日本国内においては、スタグフレーションの懸念を増すものでもあるのです。

 しかし、その一方で自民党政権は、これら中国の影響による株高について、あたかも自分たちの経済政策の手柄であるかのごとく宣伝し、また物価高についても、これは政府・日銀が行った共同声明、2%の物価上昇を実現させるという共同声明で唱えた政策が上手くいっているものだ、という宣伝を行うことは確実でしょう。その一方で、原油と連動して価格が変動する天然ガスの輸入コスト増を受けて、「経済のために」と称し、原発再稼働の口実にすることも容易に想像出来るわけです。

 繰り返しますが、中国経済の拡大自体は、ごく自然なものであり、だから日本としては、発想を逆転し、この中国経済の拡大をいかに所得の向上に繋げるか、そして何より、中国向けの投資で得た稼ぎを活用して、これを福島や祝島の支援にまわすことを考えるべきなのです。またその一方で、脱原発を明確に打ち出すこと。これで日本の経済は再生への展望が開けるし、またそれ以外に道などない筈です。

 目下のところ、株式市場や為替市場は、ユーロ圏の問題により盛んに乱高下している状況が続いているわけですが、しかしヘッジファンドは、このユーロ圏の問題を、利益確定売りの恰好の名目や、為替における短期的な利益の創出に利用しているということころが大であり、中長期的に見れば、今後日本株が大幅に上昇していくだろうということは明らかです。

 そうであるならば、この中国経済の本格的な拡大について、これを福島や祝島への支援金作りの絶好の機会ととらえ、そのための特別のファンドを創出することなどが求められると思います。つまり、中国経済拡大による株高で得たおカネを、福島への支援にまわしつつ、祝島その他に再投資し、そうして新たに創出したファンドを、脱原発実現への要とするということです。

 具体的には、香港経由での香港ドルによる中国株への投資、及び日本企業のなかで中国向け輸出銘柄への投資、そして拡大する再生可能エネルギー関連銘柄への投資、これらを行うファンドを設立し、そこで得た収益を、福島や祝島へと送るのです。

 政府にしろ、経団連メガバンクにしろ、既得権益層は、絶対にこのような趣旨のファンドを作るようなことをしないでしょう。そうであるならば、我々市民がやるしかありません。既に何度とも申し上げて来たように、今後、中長期的に見て、中国経済の拡大は明らかです。一方で、いまの日本社会が福島や祝島を支援する資金を捻出できないならば、それはもう新たに稼ぐしかないのであり、そして新たに稼ぐことは、間違いなく可能なのです。福島や祝島を本気で支援しようとするならば、我々は何よりも中国の実体経済の力強さに頼る以外にないのであり、そしてそのことは、やろうと思えば、絶対に出来るのです。