中国で全人代開幕、2013年予算草案発表! 医療衛生・省エネ・エコ・社会保障重視が鮮明に!

 ついに中国で全人代が開幕しました。それに併せ、早速2013年予算の草案も発表されたのですが、しかし、日本の大手新聞は、この中国の予算について、まるで真実を伝えていません。

 中国政府の予算の詳細は、市民が直接中国財政部(財務省に相当)のサイトにアクセスし、中国語で読む以外に、真実を知る術はありません。

 日本時間の昨日夕方、まずはヨーロッパ市場において、株価が猛烈に上昇しました。フランス・ドイツ・イタリアといったあたりは、いずれも2%以上の上昇です。更にその後市場が開いたアメリカも、ヨーロッパほど強烈な上げではないものの、しかし着実に株価は上昇し、ニューヨーク・ダウは史上最高値を更新です。一方、同じ時間、シカゴ市場において日本株も急上昇し、なので当然ながら香港も順調に上昇しています。

 これら一連の株価上昇が、中国の予算草案に起因するものであることは、もはや明らかです。事前の発表によると、新たに新指導部が発足する今回の全人代には、実に1000人以上の外国プレスが取材に訪れていまして、まるでオリンピックのような物凄い状況になっています。

 という訳で、今回は、この中国の2013年予算草案の詳細についてご報告致します。

 まず、予算規模ですが、これは中央政府の支出が6兆9560億元、地方政府の支出が11兆7543億元、更に、その他諸々合わせた合計は13兆8246億元となり、前年比で10・0%の増額となりました。これを日本円に換算しますと、実に200兆円を超えるという、とんでもない規模のものです。

 さて、この予算草案の内容ですが、これについてはまず、日本の大手新聞の報道を糾弾することから始めなくてはなりません。というのも、大手新聞は、今回の予算草案について、一様に、国防費が前年比で10・7%も増加しており、これは昨年の中国のGDP成長率7・8%を大幅に超えるもので、中国の軍事拡張の表れであると報じていますが、このような報道はまったくの間違いです。

 何故なら、まず第1に、今年の中国の予算総額は、先程お伝えした様に、前年比で「+10・0%」なのです。つまり、「全体の予算は10・0%増えて、そのうち国防費の増額率は10・7%」と報道するのが正しいのであり、「GDP成長率は7・8%の伸びにも拘わらず、国防費は10・7%も増えている」などという報道は、明らかな歪曲です。大手新聞は、このような歪曲を行うことで、中国が軍事拡張をしているなどという、およそ事実に反する空想をでっち上げ、そうして世論を煽っています。

 GDP成長率が7・8%の上昇であったにも拘わらず、何故予算規模は10・0%も増えているかというと、昨年、中国の税収は、国内消費税、企業所得税、個人所得税などが、GDP成長率以上に伸びているのです。当たり前ですが、増税をすれば、税収はGDP成長率以上に伸びるのです。そして、ここに新規の国債発行が加わることで、予算規模を2桁増やすことが可能になるのです。

 そして、中国は軍事拡張などしていない、という第2の理由は、GDPに占める国防費の比率です。政府の財政赤字についてこれを対GDPで計算することは皆さんもよくご存知のことと思いますが、同じことが、国防費においてもなされているのです。経済規模の大きい国の場合、フランス・イギリス・イタリアなどは、その年の財政状況によって異なるものの、これらの国々の国防費は、対GDP比で概ね「2%〜2・5%」といったあたりです。この「2%〜2・5%」というのが、いわゆる大国における国防費の国際スタンダードであり、この水準を大幅に超えるのがアメリカ、大幅に下回るのがドイツと日本です。で、中国はどうかと言うと、中国の国防費がGDPに占める割合は、2%に満たないどころか、ドイツよりも更に低いのです。「平和国家」ドイツよりも更に低い水準にある中国が、何故軍事拡張と批判されなければならないのでしょうか? そんなことがあるわけないんです。

 という訳で、日本の大手新聞が報道する中国の軍事拡張というのは、明らかにこじつけによるデタラメ以外のなにものでないのであり、まともに取り上げるようなものではないです。大手新聞が、いたずらに軍事的緊張を煽り、世論誘導しようというのは、絶対に許されないことです。

 さて、ここからは、中国の予算草案の内容を詳細に見ていきます。

 まず、最も目につくのが、医療衛生部門の増額です。今年の中国の医療衛生支出は、前年比で実に27・1%増という物凄い伸びなのです。

 次いで目につくのが、省エネ・エコ支出で、前年比18・8%増です。この分野については、但し書きがありまして、その内容は、建物における省エネ設備、及び汚水処理に重点的に資金を投入する予定である、とのことです。ちなみに、中国の環境汚染というと、日本ではとかく大気汚染ばかり注目されますが、しかし実は、大気汚染以上に水質汚染の被害の方がひどいのです。理由は主に2つあって、まず1つ目は、工場などによる汚水の垂れ流しです。政府はもちろんこのような汚水の垂れ流しを厳しく規制しているのですが、しかしそれでも、政府の取り締まりの目を盗んでの垂れ流しが後を絶ちません。

 2つ目は、地下資源採掘による水質汚染です。中国には、様々な資源があるわけですが
、この資源を採掘する際にも、企業は大量の汚染水を垂れ流しているのです。

 この2つの要因からなる汚染水が、地下水脈に混ざり、そうしてドンドン各地に拡散してしまっているのです。

 大気汚染については、中国の電力の7〜8割を石炭火力が占めていることが最大の要因なので、これを天然ガス火力と再生可能エネルギーに置き換えることで、かなりの部分は解消します。問題は、水質汚染の方です。だからこれを何とかするために、中国政府は重点的に予算を投入しようという計画なのです。

 更に、社会保障関連の支出も増えています。こちらは、前年比で13・9%の伸びなのですが、これは当然ながら、医療衛生の「医療」部門とも連動してのものであることは確かでしょう。

 以上が、主なところです。このように、今年の中国は、医療衛生・省エネ・エコ・社会保障にこそ、最も重点的に予算を投入しようとしているのです。ただ、これはあくまでも予算の「草案」でして、事業が動くのは、具体的な政策が発表され、実際に予算がついたうえでのことになります。という訳で、中国の全人代からは、まだまだ目を離すことが出来ません。

 最後になりますが、1つだけ、東証1部の売買の特徴をお伝えしておきます。以前、地熱発電事業から新日本科学の株価が急上昇しているとお伝えしましたが、ここに来て、新日本科学の株価は、急上昇どころではなくなっています。一昨日、昨日と連日でストップ高になり、そして今日もこのままだと、またストップ高になるのではないかという、とてつもない急騰ぶりです。

 とにかく、たった2週間ほどで株価が500%ほど上昇するという、凄まじい上昇ぶりです。地熱発電が株価上昇に与える威力というものを、強烈に印象付ける銘柄です。