【強烈に株価が上昇したアジア市場! 東証1部では、中国関連銘柄・太陽光関連銘柄が好調】

 昨日の日経平均株価は、前日の終値からプラス2・71%上昇し、1万1559円で取引を終えました。ちなみに、売買代金は2兆1169億円です。

 また、昨日はアジア太平洋地域の各市場もほぼ全面高となったのですが、しかし昨日は、単に株価が上昇しただけではありません。以下は、昨日の主な各市場ごとの株価上昇率です(なお、昨日は台湾市場は休場です)。

   中国(上海)   +2・26%
   香港       +1・96%
   韓国       +1・12%
   ベトナム     +1・89%
   インドネシア   +1・68%
   フィリピン    +1・58%
   タイ       +1・55%

 見ての通り、単に全面高というだけでなく、1%以下の上昇のところが1つもないのです。最低でも韓国総合指数の「+1・12%」という、滅多に見られない物凄い上昇です。

 とりわけ強い動きだったのが、中国株です。ちなみに、これまで既に何度も申し上げてきたように、中国の重要な株価指標というのは、上海だけではありません。なにしろ13億人もいる以上当たり前なのですが、深センA株は「+2・15%」、深センB株は「+3・64%」、また香港H株が「+2・62%」と、非常に強いです(香港には株価指数が3つあり、そのうちのH株が、中国本土の企業が上場している市場です)。

 という訳で、昨日のアジア市場は、全体としてかなり上昇しながら、とりわけ日本と中国の上昇が特に強烈だったと言えるでしょう。

 これについて、まず香港市場については、日本時間の一昨日夜にアメリカ議会で行われた、FRBバーナンキ議長の議会証言が挙げられています。バーナンキ議長はこの席で、FRBは今後もQE3と呼ばれる大規模な金融緩和を継続すると発言したことから、アメリカからの資金流入への期待感から株価上昇になった、ということが日本の市場関係者の間では言われています。しかし、それだけでは中国本土の強烈な上昇は説明がつきません。

 何故なら、上海・深センともに、その主力は人民元建てのA株であり、これは基本的には、外国人が株を購入することは出来ません。にも拘らず、2%以上も株価が上昇しているのは何故かというと、それはひとえに、来週に迫った全人代への期待以外に他なりません。ここで出てくるであろう改革などへの期待から、株価が上昇したのです。

 1月までの時点では、何よりも中西部の開発と都市化というインフラ関連が最も期待されていたのですが、ここに来て、新たに金融改革への期待、それと、再生可能エネルギーなど環境関連銘柄への期待が非常に高まっています。クリーン・エネルギー大手の銘柄は、相当な株価上昇です。とはいえ、これはあくまでも序章に過ぎず、全人代以降、更に本格的な株価上昇が見込まれます。

 さて、ここからは、昨日の東証の取引の動向を見ていきます。現在は、来週に控えた全人代、そして再来週に決まると予想される日銀次期総裁人事を見据え、非常に様子見ムードが濃い状態のため、過去3日間は、短期的な儲けを得ようという投機的な売買が非常に大きいものでした。しかし、昨日は違います。

 昨日、日経平均は確かに大幅高となったわけですが、一方で、これまでのように、大幅な円安と大幅な株高がセットになるというものではありませんでした。株価の動きに比べると、為替はかなりの小動きだったのです。そんななか、いったいどのような業種の上昇が目立ったのか? 注目すべきは、自動車です。昨日、自動車は、業種別騰落率の上昇率で、第3位でした。

 これがなんで注目であるかというと、為替が激しく円安になった月曜日に株価は急騰したものの、円安恩恵を受ける代表格である筈の自動車株はあまり上がらず、一方で為替が激しく円高になった火曜日も、同様に自動車株はあまり下落しなかったのです。つまり、短期の利鞘を稼ごうというヘッジファンドの思惑が見え見えだったこの投機的な局面において、自動車株は殆ど反応せず、様子見ムードだったわけです。

 ところが、昨日は違いました。円相場は殆ど動かなかったにも拘わらず、自動車株はかなりの上昇を見せたのです。では、具体的にどこが上がったのか? 「円安+株高」がセットの場合、最も上昇するのがマツダというのが昨秋以降の流れだったわけですが、昨日はもちろん違います。各社ともに上昇率は結構接近していたものの、そんななかで、最も株価が上昇していたのは、日産です。

 日本の大手自動車メーカーにおける日産の特徴は何かと言うこと、売上高の面から言えば、これはなによりも中国向けの比率が高いということです。ちなみに、昨年9月、尖閣問題による日中関係の悪化を受けて日本車の不買運動が起こった際、最も株価が下落したのも、当然ながら日産でした。

 特に円安になったわけでもない日に、そして中国株がグンと上がった日に、日本の自動車メーカーのなかで日産の株が最も上昇したというのは、決して偶然ではないでしょう。昨秋、中国での日本車の不買が深刻化した際、日本の自動車メーカー幹部の間で盛んに言われたのが、春節が過ぎればかなり回復するのではないか、ということでした。という訳で、時期的にもぴったりなのです。

 もう1つの注目はコマツです。実は、昨日の日経新聞朝刊で、来期(つまり2014年3月期)のコマツの純利益が、3000億円を超える公算が高いという報道がなされたのです。この3000億円という数字は、欧米が不動産バブルに沸き、世界的に好況だったピーク時の利益に匹敵するものです。そして、コマツというのは、工作機械・建設機械の大手であり、つまり生産活動やインフラ投資に不可欠として、中国関連銘柄の代表格とされているところです。という訳で、そのコマツも、当然ながら、昨日はかなり株価が上昇しています。

 とりたてて円安に振れたわけでもないのに、日経平均は大幅に上昇し、しかも日産とコマツは特に上昇幅が大きかった、となれば、これは当然中国の株高と連動してのものでしょう。

 加えて、再生可能エネルギー関連も好調です。ここ最近、地熱発電で新日本科学が、太陽光発電サニックスが、だいたい日替わりないし2日おきぐらいで猛烈に上昇することが続いているのですが、昨日はサニックスの株価が急騰です。昨日のサニックスの株価上昇率は、東証1部上場およそ1700銘柄のなかで、上昇率で第4位でした。

 という訳で、殆ど円安が進むことなく、それでいて中国関連株と太陽光関連株が非常に上昇するというのはかなりいいことなのですが、しかしこういうことはそうあるものでもないでしょう。一方で、こういう日がそれなりにあるということもまた事実です。

 ちなみに、円安の主要因に中国経済の上昇というのがあるわけですが、それで何故こういうことがあるかというと、日産に関しては、反日感情が収まってきたということで、これは円安など関係ないわけです。コマツに関しては、業績見通しの上昇修正が「見込まれる」ということで、これも円安とは違います。何故なら、円安にならなくても、コマツの得意とする分野において、中国の現地企業が抱えていた過剰在庫の整理が予想より早めに行われれば、その分受注も増えて業績は上がるので、これも円安とはあまり関係ありません。もちろんコマツも円安になったら、それだけ更に恩恵を受けるわけですが、今回の株価上昇は、その類いのものではないわけです。今回は、あくまでも特殊要因です。

 実際、中国の恩恵を最も受けるだろう(と僕が思っている本命ともいえるところ)の株価は、まだ本格的には動いていません。そこが動くのは、全人代が終わって以降のことです。