世界経済におけるアメリカの地位低下が更に鮮明に! 昨年10〜12月期のGDPはマイナスで、消費者心理も大幅下落
昨日、日経平均株価は前日の終値からプラス2・28%上昇し、1万1113円で取引を終えました。かなり大幅な上昇です。では、それなら円相場もだいぶ円安が進んだのかというと、これがそうでもありません。確かに、昨日から較べると円安にはなっているものの、とはいえその値幅はそれほど大きなものではありません。
ちなみに、昨日はアジア太平洋市場は全面高でした。中国・香港・台湾・韓国・オーストラリア・フィリピン・ベトナム・インドネシア・タイ・インド、とにかくすべて株価が上昇しています。
とはいえ、それなら昨日の日本株上昇も、これらアジア太平洋地域の株価上昇に連動してのものかというと、これがそうでもないのです。もちろん業種によっては連動しているものもあるのですが、しかし東証1部全体で見るならば、これは明確に違います。と言いますのも、昨日最も上昇が目立ったのは、不動産セクターなのです。ちなみに、ここ最近、アジア各国も一様に不動産株は上昇していますけど、しかし一口にアジアといっても、急ピッチでインフラ整備と都市化の進む新興国と、既に発展している日本では、まったく事情が違うわけです。いまの日本においてそれほど不動産需要があるとは思えず、しかも大手銀行は不動産ローンの金利を引き上げることを決めています。
それはともかくとして、昨日の東京市場の売買は、内容はともかく非常に盛況でした。昨日の売買代金は、1億9778億円と実質的には2億円です。そして、株価の大幅上昇を受けて、200日移動平均からの乖離率は、ついに20%を超え、21・19%へと急上昇です。
さて、以下は、売買高の上位10銘柄です。
1みずほFG
2マツダ
3三菱UFJ
4三井住友建設
5野村証券
6アイフル
7オリコ
8新日鉄住金
9長谷工
10東芝
要するに、変わり映えのしない銘柄ばかりです。三井住友建設と長谷工は、ここ1週間ほどこのランクから漏れていましたが、不動産株の上昇を受けて、あらためて大きく物色された次第です。次に、業種別騰落率の上昇上位5業種です。
1不動産 +3・48%
2倉庫・運輸 +3・47%
3建設 +2・79%
4証券・商品 +2・62%
5情報・通信 +2・12%
2位の倉庫・運輸ですが、これはよく調べてみると、かなり倉庫に偏った上昇です。という訳で、不動産・倉庫・建設というのは、セットで株価が上昇したわけです。こうなると、公共事業関連からの物色という感じもしてきます。
ちなみに、昨日は、全33業種中、32業種で株価が上昇しました。唯一下落したのは、電気・ガスです。要するに、電力株だけが下落したというわけです。
ところで、昨日はアメリカから重要な経済統計が2つ出てきました。まずは、昨年10〜12月期のGDPです。昨年末以来、日本の大手メディア・経済学者・金融アナリストなどの紋切型同盟は、アメリカ経済は回復している、アメリカ経済は好調だ、と繰り返してきました。しかし、今回の発表により、これら紋切型同盟が盛んに報道・解説してきたことが、いかにデタラメであったか、これがあらためてはっきりしました。というのも、アメリカの昨年10〜12月期のGDPは、前期比でマイナス0・1という数字が出たのです。要するに、マイナス成長というやつです。
しかも、アメリカの景気後退を示すデータは、これだけにとどまらないのです。
昨日は、市民の消費マインドを推し量るうえで重要な指標である、今年1月のアメリカの消費者信頼感指数も発表されたのですが、これが昨年12月からマイナス8・1%と大幅に下落しました。ちなみに、この指標は、11月から3ヶ月連続の下落です。つまり、アメリカ市民の消費マインドは、ドンドン悪化する一方であるわけです。
それに対して、アメリカと正反対にあるのが、アジア太平洋地域です。とりわけ中国は、どの指標も上昇の一途を辿っております。非常に強いです。
という訳で、昨年末以来、大手メディア・経済学者・金融アナリストの紋切型同盟は、どこも揃って、アメリカ経済は順調に回復している、一方で中国は世界経済の足を引っ張っており今後も危ない、などと言ってきたわけですが、これら紋切型同盟がいかにデタラメの報道・デタラメの解説ばかりおこなってきたか、もはや誰の目にも明らかです。
そして、世界経済の内容に関して、もっと重要なのは次のことです。つまり、アメリカのGDPがマイナスであり、またアメリカの消費者心理は冷え込む一方で、そうしてアメリカは世界経済の足をかなり引っ張っているのに、しかしアジア・太平洋・中南米地域は、いずれも経済がドンドン上昇し、輸出は伸びる、株価は上がる、個人消費も加速する、という状況になっているのは何故なのか? ということです。言うまでもなく、すべては中国に依ります。とにかく、中国経済が落ち込むと他の世界各国も軒並み落ち込むところが、中国経済が上向くと、途端に他の世界各国も軒並み上昇するわけです。アメリカが低迷しようと、そんなことは関係なく、とにかく中国さえ上向けば、他の各国も上向くのです。このことから明らかなのは、以前から僕が繰り返し申し上げてきたように、既にアメリカは世界貿易の中心ではなく、世界貿易は、中国を中心にまわっているということです。
アメリカの凋落を裏付けるものとして、興味深い動向があります。東南アジアにおいてタイ・フィリピンの株価がとりわけ絶好調なら、中南米ではメキシコ株が絶好調なのです。そしてこのメキシコ経済の上昇を受けて、かつてメキシコからアメリカに働きにやってきた人々の間では、ここ最近、アメリカからメキシコへの移動が活発化しているのです。何故か? 理由は簡単です。アメリカに来たものの職はない、物価も高い、困ったなあ、こんな筈じゃなかったのに・・・と思っていたら、いつの間にかメキシコ経済が急上昇中で、メキシコに戻れば職もあるし、物価も安いわけです。という訳で、現在アメリカからメキシコへの移動が活発化しています。いわば、逆移民です。このことは、アメリカ経済の更なる凋落を象徴するものです。