世界中が、中国経済上昇の恩恵を受けようとしているのに・・・

 昨日の日経平均株価は、前日の終値からプラス0・39%上昇し、1万860円で取引を終えました。取引開始の朝9時頃から円安が進み、それに合わせるかのように株価も上昇したのですが、午後になると円高へと振れ、併せて株価も下落しました。ただ、一昨日からの比較で見ると、円相場にそれほどの変動はなく、株価もそれを受けてのものと思われます。

 一方、昨日、アジア太平洋地域は、いずれもの市場も好調でした。東アジア、東南アジア、オセアニアで株価が下落したのは香港だけで、他はすべて上昇しています。そして、その香港市場にしても、一昨日は高値を更新していますので、依然上昇傾向にあります。

 ところで、昨日は、建設機械などでコマツと世界シェア1位を争っているキャタピターのオーバーヘルマンCEOがアメリカCNBCの番組に出演しまして、今後の世界経済の見通しについて語りました。それによると、中国経済は確実に上昇している、中南米も好調だ、そしてヨーロッパも良くなっている、現在世界経済の最大の問題はアメリカの政治リスクだ、ということです。至極当然の見方だと思います。アメリカの政治リスクとは、言うまでもなく議会のねじれです。とにかくオバマ政権と共和党では、経済に対するスタンスがまったく違いますので、これが大きなリスクと見るのは当然でしょう。ちなみに、日本の大手メディアでは依然として、中国はあやしい、ヨーロッパも駄目、頼りになるのはアメリカだ、などといまだに報じているわけですが、世界経済に関してこんな現状認識を持っているのは、世界中でただ日本だけではないでしょうか・・・。

 中国経済は、今後更に上昇していくことは間違いありません。個人消費、輸出、製造業の景況感、銀行の融資残高、そして株価と、とにかくあらゆる指標、あらゆる数字がすべて良好になる一方です。昨日、アジア株専門番組の「ASIAエクスプレス」では、大和証券キャピタルマーケッツ香港リミテッドの田中道生さんによる中国市場の電話リポートがありまして、それによると、「中国経済は景気回復から拡大に向かうタイミングにある」と、今後益々上昇していくという見通しが述べられました。そして田中さんは、注目の銘柄として、香港上場のチャイナ・コスコという海運会社の株価を推奨していた。これは極めて重要なことです。と言いますのも、既に何度も申し上げてきたように、海運というのは貿易における物流が主な業務であり、だからこの海運業界の株価の見通しは、今後の世界貿易の見通しと直結するからです。上海市場には、上海コンテナ貨物指数という海運市況を占うものがあるのですが、いま、中国経済の上昇に伴い、この指標は猛烈に上昇中です。

 僕は12月の時点から、海運株には特に注目して、度々言及してきました。東証で海運株が上昇してきたのは、投機的な動きからではなく、世界貿易の最大の鍵を握る中国経済が上昇してきたからであり、だからこの株価は上がると繰り返し指摘してきました。なので、僕の指摘を信じて海運株を買った人は今頃大儲けしていると思いますが、中長期的に見て、この株は今後まだまだ上がります。中国経済上昇の恩恵を福島支援につなげるべく、海運・機械・タイヤ・繊維を中心にファンドを作り、その利益を福島に送ろうかと本気で考えるほど、中国経済の上昇は強いものです。

 このことを更に裏付ける数字が、オセアニアから昨日相次いで出てきました。オーストラリアは、中国が最大の輸出相手であるわけですが、昨日発表されたオーストラリアの企業信頼感指数は、11月から実に12ポイントも上昇という凄まじいことになっています。過去数年間で、これほどの上昇はありません。物凄い上昇です。そして、この中国向け輸出の好調が、オーストラリアへの投資の拡大を呼び、そして投資の拡大がオーストラリアの内需を拡大するという、好循環が起きています。

 更に、このオーストラリアの上昇に引っ張られて、隣国ニュージーランドも急上昇しています。昨日発表されたニュージーランドの昨年12月の貿易統計は、4億8600万NZドルの黒字と出ました。アナリストたちによる市場予想は、1億NZドルちょっとの赤字見込みでしたので、大幅なプラスと言えます。

 また、株価に関しては、とりわけタイとフィリピンが非常に強い値動きを見せています。現在洪水が起こっているマレーシアを別にすると、東南アジア市場はいずれも絶好調なのですが、この動きは、中国が春節を迎えるに当たり、中国人観光客への期待から、今後益々活況を呈すると予想されます。

 もとより、アメリカ企業にしても、頼みは中国なのです。尖閣問題は、ちょうど中国経済が上向いてきたときに起こったわけですが、この尖閣問題による日中関係の悪化以降、アメリカ企業は、自動車から観光からキャタピラーなどのインフラ関連に至るまで、中国経済の上昇を最大限に取り込もうと必死です。

 このように、世界各国が中国経済の上昇の恩恵を受けようとしているなか、完全に蚊帳の外になっているのが日本です。日本だけが、猛烈に損をしているのです。このままでいい筈がありません。尖閣問題が起こった昨年9月以降、日本は、このことにより、いったい何兆円失ったのでしょうか? 以前お伝えしたように、原発事故が起こる以前の福島の県内総生産は、年間およそ7兆円なのです。7兆円あれば、福島の人々すべての生活を1年間保証できるのです。そして、日中関係が改善さえすれば、中国相手に、7兆円ぐらい簡単に稼げるのです。中国の市民、中国の企業も、日本の技術、日本からの投資、日本への観光を、強く望んでいます。にも拘らず、いつまでもこんなことを続けるのでしょうか? 何度でも言いましょう、日中友好なくして、日本経済の再生などありえないのです。

 一方、ここからは昨日の東証の取引の内容を見ていきます。相変わらず売買は活況で、昨日の売買代金は、実に2兆571億円にのぼりました。ちなみに、売買代金は一昨日も2兆円を超えていますので、今週に入って2日連続2兆円超えということになります。そして、200日以上平均からの乖離率も上昇し、プラス18・58と、またしてもプラス20台が視界に入ってきました。

 さて、個別銘柄ですが、これは主に2つの特徴がありました。昨日、個別の売買代金は、1位がソニーで、2〜4位をメガバンクが占めました。つまり、ソニー銀行、そして財閥系大銀行、ここが上位を独占した格好です。とりわけ目立ったのは、メガバンクの株価上昇率です。

   三菱UFJ    +3・74%
   三井住友     +4・38%
   みずほFG    +2・94%

 ちなみに、これら3メガバンクは、いずれも昨年来高値を更新しています。そして、この3メガバンクは、チャートで見る株価の上昇曲線も昨日はそっくりでしたので、売買代金の多さと併せて、ヘッジファンドがこれらメガバンクの株をまとめて買ったことは間違いありません。

 一方で、以下は、昨日の業種別騰落率です。

   鉱業      +5・97%
   銀行      +2・97%
   鉄鋼      +2・77%
   石油・石炭   +2・10%
   証券・商品   +1・72%

 鉱業は、一昨日も上昇率で1位だったわけですが、昨日は更に突き抜けて上昇しました。鉄鋼にしても、鉄鋼需要の増加と鉄鉱石の上昇を受けてのものであるわけで、全体として、資源株と金融株が上位を独占した格好です。

 資源に関しては、原油価格と併せて見ることはもちろん不可欠です。ニューヨークの原油価格は、12月上旬、1バレル85ドルほどだったものが、年末には90ドルに乗せて年を越しました。そして年初からの数日でいきなり93ドルまで上昇します。その後も原油はジワジワと上昇していまして、今朝の段階で97ドル台の半ばで推移しています。ついに100ドルが目前に迫ってきました。

 過去、原油が1バレル100ドルを超えたときというのは、アメリカの不動産バブル、アラブの春、ホルムズ海峡封鎖問題などによるものでした。しかし、ついに中国をはじめとした新興国経済の上昇から、100ドルを超えようとしています。これは、かつてないことです。しかも、何度も申し上げているように、中国など新興国のインフラ投資は、バブルや政変によるものではなく、中長期的なヴィジョンに則って行われている以上、過去に100ドルを超えたときとは違い、当分の間、原油価格が下落する可能性はありません。

 これは、大変に重要な問題です。原油以外にも、鉄鉱石など、様々な資源価格は一様に上昇する気配です。そのため、イノベーションという点においては、炭素繊維などの新素材の研究開発は極めて重要になってきます。いかに地下資源に依存しないで素材や原材料を生み出せるか、このことは、再生可能エネルギーと共に、今後の文明の大きな鍵を握るでしょう。

 さて、最後に、日経平均株価の背景にあるものについて論じます。このレポートでは、これまで何度も岡村友哉さんの名前を出してきましたが、昨日、株式市場分析専門番組の「ラップ・トゥデイ」において、この岡村さんが、またも重要な指摘を行いました。今年に入ってからというもの、日経平均の値動きにパターンがあることは、既に指摘した通りです。日経平均は、週単位で見ると、月曜の取引開始時が1つの高値で、ここから一旦値が下がり、そして週の半ば、株価が乱高下しつつ下落もしくは地味な展開になりながら、金曜に向かって再度株価が上昇するというものです。

 このパターンについて、昨日岡村さんは、チャートを元にした詳細なテクニカル分析を行い、このような値動きについて、「これは偶然なのか、別の力が裏で働いているんじゃないか、そう勘繰ることが出来る」と言いながら、次いで、野村証券の分析を行いました。野村証券こそは、民主党政権下でジリ貧に追い込まれながら、自民党政権復活と共に息を吹き返し、昨年末以降、盛んに裏で暗躍しているところです。この1月には、英米ヘッジファンドとの深いパイプを生かして、ロンドン、ボストン、ニューヨークへキャラバンを行ったということも報告した通りです(もちろん、この情報をもたらしてくれたのも岡村さんです)。

 で、岡村さんは、「別の力が裏で働いているんじゃないか」と思って、野村証券による売買の動向を詳細に分析したのです。すると、野村証券による売買は、パターン化された日経平均の動向とそっくりであることが判明しました。これを受けて岡村さんは、「野村証券から出ている大きな手口というもので、日経平均がコントロールされている」と明言したのです。

 これはいったい何なのか? ブルームバーグが報じた安倍政権による50兆円規模の外債ファンド計画も、その中心にいるのは野村証券なのです。この野村証券の動きがとにかく解りません。キャラバン隊を結成し英米を巡回したことも、本当に日本株を売り込むことが目的なのか、あるいは別の目的があるのではないか? そう勘繰りたくなってきます。とにかく、アメリカの金融マフィアと霞ヶ関自民党政権をつないでいるのが野村証券であるというのは、ほぼ間違いない状況です。ここでいったいどういうことが計画されているのか、アベノミクスと呼ばれるものの真の正体も、ここにあるのかもしれません。

 この正体を突き止めることは非常に重要ですが、一方で、過度に惑わされてもいけません。市民としては、あくまで正攻法で脱原発日中友好を訴えつつ、広く民意を高めていくことが肝要でしょう。安全を確保するうえでも、デフレから脱却するうえでも、脱原発日中友好は、その要なのですから。