白川総裁が、自民党政府及び次期日銀総裁に対し仕掛けた戦略 そのもう1つの正体について

 1月22日、日銀は2%の物価目標の導入を決定しました。これについて、大手新聞各紙などは、この物価目標をインフレ・ターゲットだと報じています。日銀は、2%の物価上昇というインフレを達成するために物価目標としてこれを掲げたというものです。ところが、これはまったくの誤りです。

 この2%の物価目標がインフレ・ターゲットではない、ということは既に以前にも指摘したことですが、しかしこれについては、金融政策決定会合の翌日23日に日銀がPDFで公表した、「『物価の安定』についての考え方に関する付属資料」からも明らかです。ちなみに、この資料は、突然発表されたものではありません。22日の金融政策決定会合の後に行われた白川総裁は、記者会見において次のように発言しています。

 「日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としました。なお、物価安定に関する検討の詳細については、明日公表される背景説明資料をご覧頂きたいと思います。様々な数値、事実等についても書いてありますので、是非ご覧頂きたいと思います」。

 また、実際に公表された文書については、次のような但し書きが添えられています。

 「本文書は、1月21、22日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定された「金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」に関連して、「物価の安定」についての考え方の背景を説明する付属資料である」。

 そして、この2日間に渡って行われた日銀の金融政策決定会合には、政府からも、以下のメンバーが参加しています。

    1月21日
   佐藤 慎一 財務省大臣官房総括審議官(14:00〜16:52)
   松山 健士 内閣府審議官(14:00〜16:52)
    1月22日
   山口 俊一 財務副大臣(7:59〜12:14、12:32〜12:42)
   西村 康稔 内閣府副大臣(7:59〜10:49)
   甘利 明 経済財政政策担当大臣(10:55〜12:14、12:32〜12:42)

 そうである以上、この翌日に公表された「『物価の安定』についての考え方に関する付属資料」は、甘利経済財政相をはじめとした、政府の面々も了解済みであるわけであり、そして日銀と政府による共同声明も、2%の物価目標に関しては、この文書を背景とし、この文書に基づいているわけです。よって、この付属の資料は、極めて重要です。また、政府は共同声明によって、このような日銀と連携してデフレ脱却に全力を尽くすと言っている以上、そのための政府の政策も、この付属資料に則ったものでなければなりません。

 という訳で、以下に、この付属資料のなかでも、特に重要な部分をピックアップしていきます。

 まず真っ先に目につくのが、次の部分です。

 「日本銀行が四半期毎に実施している「生活意識に関するアンケート調査」によると、8割程度の国民は、性別、年齢、職業を問わず、一貫して物価上昇は望ましくないと回答しており、国民は単に物価が上がるという状態を望んでいる訳ではない(図表1)。この調査結果は、国民が望んでいる「物価の安定」とは、雇用の増加と賃金の上昇、企業収益の増加などを伴いながら経済がバランスよく持続的に改善し、その結果として物価の緩やかな上昇が実現する状態であることを示唆している」。

 ここで言われているのは、単に物価だけが上がるということは望まれておらず、「雇用の増加と賃金の上昇、企業収益の増加を伴い」つつ、「その結果として物価の緩やかな上昇が実現する状態」が望まれる、ということです。当たり前です。物価だけが上昇し、その一方で所得が上がらなければ、これはデフレよりも更に悪いスタグフレーションに陥ります。もしスタグフレーションに陥る可能性があるならば、それを回避するために金融当局が予防策を講じるのは、至極当然のことです。

 一方で、次は、日本の物価を、歴史的な視点から論じたものです。

 「わが国の場合、消費者物価が緩やかな下落に転じた1988年以前に遡っても、海外主要国に比べて相対的に低い物価上昇率が続いていた。消費者物価の前年比上昇率を主要国と比較すると、わが国は、概ね2〜3%台で推移している米欧諸国よりも恒常的に低い状態が続いている(図表4)。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は海外主要国より低いと考えられ、そうした長期間にわたって続いた低い物価上昇率を前提として投資や消費などの意思決定がなされる状態が、定着している可能性が高い」。

 ちなみに、日本においては、不動産バブルが起こった1980年代後半でさえ、物価上昇率は2%に届いていなかったのです。かつての日本は高成長・低インフレを両立していた、このことは、昨年秋に開催されたIMF・世銀年次総会の席においても白川総裁が論じていたことです。

 そうである以上、日銀が2%の物価目標を掲げるとしても、その目標の背景にあるものがインフレ・ターゲットではないことは明らかです。実際、上に抜粋した直後には、「以上3つの観点からの検討の結果は、これまでと大きな変化はない」と書いてあります。つまり、物価に関して、あらためて日銀の姿勢に大きな変化はないと強調しているわけです。では、ならば何故今回日銀は2%の物価目標を掲げたのか? 僕は先日アップした「日銀白川総裁勝利、自民党敗北 白川総裁はいかにして自民党の圧力を将来への予防にすり変えたのか」のなかで、次の部分に着目しました。

 「先行き、物価が緩やかに上昇していくことが見込まれる中にあって、2%という目標を明確にすることは、持続可能な物価上昇率を安定させるうえで、適当と考えられる」。

 そしてこの部分について、「これは将来物価上昇率が2%を超えたとき、それを2%に抑えるための目標とも受け取れる」、「実際、日銀の金融政策によって物価を上昇させるとは、一言も書いていない」と分析したわけですが、金融政策決定会合の翌日に公表された文書では、この部分が次のように加筆修正されています。

 「先行き、物価が緩やかに上昇していくことが見込まれる中にあって、2%という目標を明確にすることは、予想物価上昇率の過度な上昇・下落を回避し(いわゆるアンカー効果)、ひいては持続可能な物価上昇率を安定させるうえで、適当と考えられる」。

 一目瞭然で、「予想物価上昇率の過度な上昇・下落を回避し(いわゆるアンカー効果)」という文言が加えられたわけです。つまり、下落する一方の物価を単に上げることだけが目的なのではなく、物価が過度に上がった場合、その物価上昇を抑制するための目標でもあるということが、今回の文書で明確になったわけです。

 ちなみに、予想される急激なインフレについて、先日、僕は特に原油を挙げて述べました。原油価格はあるとき急激に上昇することがあるわけで、中央銀行というのは、当然そのような事態を想定して、物価安定に向け長期的な視座のものとで金融政策を行うべきです。このような事態を想定することなく、原油高など突然の物価上昇を受けて短期的に金融引き締めなどを行おうとすると、経済にとってはダメージとなります。そのため、長期的な視座で物価安定を実現するべく、金融政策を行う必要があるからです。

 そして実は、今回の文書において、原油高など突然の物価上昇を受けて短期的に金融引き締めなどを行おうとすると、経済にとってはダメージとなるから、そのため長期的な視座で物価安定を実現するべく金融政策を行う必要がある、ということが、明確に述べられているのです。以下が、その部分の抜粋です。

 「金融政策は、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しに加え、金融面での不均衡を含めた様々なリスクも点検しながら、柔軟に運営していく必要がある。すなわち、持続可能な物価の安定を実現するには、特定の物価上昇率を特定の期限内に達成するといった機械的な金融政策運営は適切ではない。例えば、原油価格の変動といった供給ショックに対し、金融政策によって短期的に対応しようとすると、経済活動に大きな負荷がかかり、かえって長い目でみた物価安定を実現することが難しくなる」。

 「また、近年の内外の経験を振り返っても、多くの信用バブルが、その時点では物価が安定しているとの認識のもとで発生し、バブル崩壊後には経済活動や物価の大きな変動をもたらしてきた。金融政策運営に当たり柔軟性の確保が重要であるとの考え方は、各国で広く共有されており、とくに、世界的な金融危機以降、海外主要国では、金融システムの安定へ配慮することの重要性を対外的に明確にするなど、そうした考え方が強く意識されるようになってきている(図表5)。わが国でも、この1年間で、柔軟な金融政策運営の重要性に対する理解が着実に拡がってきている。こうした状況を前提とすると、「目標」と表現することが、日本銀行の考え方を伝えるうえで、わかりやすく適当であると判断される」。

 つまり、原油価格の高騰や、信用バブルの発生とその崩壊というリスクを想定したうえで、長期的な物価の安定を実現するために「目標」としたということが、明確に書かれているわけです。それは即ち、インフレ・ターゲットとしての「目標」ではなく、過度のインフレ防止のための、そしてまた急激な物価の乱高下を防止するための「目標」であるわけです。

 ちなみに、白川総裁は、1月25日、日本記者クラブで記者会見を行いました。言うまでもなく、記者クラブ制度というのは、自由報道教会の上杉隆さんをはじめ、その他岩上安身さんなど多くのフリージャーナリストが強く批判しているものです。いわゆる「官報複合体」というものを形成している、情報に関しての既得権集団であり、そのような組織であるわけですが、そこでの記者会見において、白川総裁は、次のように述べています。

 「現在、デフレ方向への懸念と、インフレ方向への懸念、両方への懸念があるわけでございますが、そこで、この物価を安定させるための錨といいますか、アンカーとしての役割を果たし、上の方向にも、下の方向にも・・・」

 という訳です。つまり、ここでも強調されているのは、物価のアンカーなんだということです。このアンカーというのは、譬えて言うなら、イビチャ・オシム監督時代の日本代表における鈴木啓太のような存在です。基本的にセントラル・ミッドフィルダーとして、相手チームの攻撃に対しあらゆる想定をし、先回りしてとにかく相手の攻撃の芽を潰しまくりながら、一方でディフェンダー闘莉王などが攻撃参加した場合は最終ラインを埋める、しかし攻撃が煮詰まった場合、隙を突いて自ら積極的に相手チームのボックス内へ飛び込んでいく、これがアンカーです。ちなみに、オシムは啓太のことを「水を運ぶ選手」と評しましたが、中央銀行も、企業などの各プレイヤーに対し、マネーという水を運ぶ選手であるというところも似ています。

 また、白川総裁は記者クラブでの会見において、次のようなことも言っています。

 「日本銀行の行う金融政策の目的、理念については、日本銀行法に「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」ことが明確に定められています。従って、当然のことながら、日本銀行としては、この理念とこの理念のもとで設定された新たな物価安定の目標のもとで、金融政策を運営していくことになります。物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、経済・物価の現状と見通しや、金融面での不均衡を含めた様々なリスクを点検します。こうした金融政策の枠組みは、現在、多くの中央銀行が導入しているものと同じものです。従って、これを柔軟な物価目標政策――フレキシブル・インフレーション・ターゲティング――と呼ぶのであれば、日本銀行の枠組みもそのように理解することができます」。

 この「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」というのは、相当にギリギリの発言です。これはインフレ・ターゲットではないとはっきり明言したなら、それはとんでもない批判にさらされます。日銀への圧力も高まります。というより、この1週間における白川総裁の発言は、どれも相当にギリギリのものばかりです。日本政府をはじめ、大手メディア・経済学者・金融アナリストたちは、日本経済がいつまでもデフレで不況に喘ぐのは日銀が悪いのだ、という論法で押し通してきたわけですが、それに対して白川総裁は、日銀は物価の安定を行うアンカーであり、成長を担うのは政府をはじめとした各経済主体の努力による、という姿勢を一貫して貫いているわけです。これは譬えていうなら、得点できないフォワードや攻撃的ミッドフィルダーなどの各プレイヤーが、チームが低迷しているのはお前(アンカー)が悪いんだ、と言っているようなものです。それに対し白川総裁が、チームが低迷しているのは、政府や経団連など前線のプレイヤーがパス回しばかりしてシュートというチャレンジを先送りしているからだ、日銀は必要な水(マネー)は十分に供給している、と切り返している状態です。

 このことは、今回公表された文書のうち、次の部分からはっきりと読み取れます。

 「1990年代初頭のバブル崩壊の後、それによるバランスシート調整に時間を要した。加えて、同時期に、急速な少子高齢化グローバル化など日本経済を取り巻く環境は大きく変化したが、これに対する労働・資本など生産要素の産業間・企業間の移動が円滑に進まず、経済構造の適応が遅れた。そのため、経済成長率が趨勢的に低下し、企業や家計の中長期的な成長期待も低下トレンドをたどった(図表10)」。

 「成長期待の低下は、不採算の経済活動に代わる新たな事業や企業を生み出しにくい経済構造とも相まって、企業がコスト削減や価格競争で生き残りを図る状況を作り出してきた。こうしたもとで、わが国企業は、(中略)主として賃金引き下げによってコスト削減を図った」。

 「それだけに、幅広い主体による成長力強化への取り組みが進み、緩和的な金融環境がより広範に活用されるようになることが、デフレからの脱却の鍵を握っている」。

 つまり、バブルの崩壊とそれによって起こった不良債権処理に手間取ったこと、また少子化・高齢化やグローバル化という変化のなかで、新しい事業を行う環境整備は進まず、一方で日本企業は主として価格競争ばかりやって賃金を引き下げてきた、これが日本がいまだにデフレに喘ぐ原因である、だからこそ各経済主体の取り組みが鍵になる、と論じているわけですが、これはまったく正しいわけです。

 とりわけ、少子化・高齢化について、日銀は次のように言っています。

 「1990年代以降、少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少するもとで人口一人当たり潜在成長率が大きく低下したことは、人々の成長期待の低下を通じて、中長期の予想物価上昇率に対する低下圧力として作用してきた。この点、海外主要国では、人口一人当たり潜在成長率と中長期の予想物価上昇率の間に相関は認められない(図表13)。このことは、日本の緩やかな物価下落は少子高齢化が直接的な原因なのではなく、少子高齢化に対応した新たな経済構造へと転換するスピードの遅さや、ひとたび成長力が低下した際にそれが賃金の引き下げや価格競争に直結しやすいわが国の企業行動等によって、緩やかな物価下落が生じやすい状況が続いてきたことを示唆している」。

 少子化・高齢化に関して、これが日本経済低迷の原因というより、このような事態に対しての対応が極めて遅いこと、しかもそのような対応を先送りしてきながら、企業は価格競争ばかりやって賃金を減らしてきた、これにより「緩やかな物価下落が生じやすい状況が続いてきた」とはっきり明言しているわけです。言うまでもなく、これは歴代の政府、及び経団連に対する批判以外のなにものでもありません。

 これを受けて、日銀は今回公表した文書において、「成長力強化の重要性」と題した章を立て、そこで次のように述べています。

 「少子高齢化という人口動態そのものを、短期間に大きく変えることは難しい。したがって、成長力の強化を図るうえで重要なことは、第1に、女性や高齢者などの労働参加が高まる環境を整備することである。第2に、労働者一人当たりが生み出す付加価値を高めるため、新たなビジネスモデルの展開を含む広い意味でのイノベーションが実現しやすい経済の仕組みを構築していくことである。これらの取り組みを加速することにより、労働力人口や家計所得の底上げを伴いながら、価格競争から新たな財・サービスを生み出す競争へと企業の中心戦略が変化していけば、実際に経済活動が活発化する中で、企業や家計の中長期的な成長期待が高まるとともに、緩和的な金融環境の活用の動きも拡がっていくと考えられる」。

 「この点、競争力と成長力の強化に向けて、政府に期待される役割も大きい。すなわち、競争力と成長力の強化は、基本的には、新たなビジネスの創造と拡大に向けた企業や金融機関のチャレンジが積み重って実現していくと考えられるが、民間部門がチャレンジ精神を発揮しやすい環境を規制・制度改革などを通じて整備することは、政府の重要な役割である」。

 そして最後に、次のような警告を発しています。

「物価や賃金が上昇する前に、長期金利のみが先行して上昇してしまい、ひいては利払い負担の増大等を通じて財政バランスに悪影響が及ぶ可能性にも注意する必要がある(図表19)。また、社会保障制度を含めて財政運営の持続性に対する人々の信頼を強めることは、人々の将来不安を軽減することを通じて民間需要の下支えに作用すると考えられる」。

 いずれにおいても、反論の余地がない、非常に正しい提言ばかりです。そして、この文書は、甘利経済財政相など政府の合意のもとに作成されたものであり、そしてこのような見解に基づいて日銀と政府による共同声明がなされた以上、政府は、ここに書かれたことに基づき、様々な改革に着手する義務があります。

 ちなみに、「成長期待の低下は、不採算の経済活動に代わる新たな事業や企業を生み出しにくい経済構造とも相まって、企業がコスト削減や価格競争で生き残りを図る状況を作り出してきた」という部分ですが、このような弊害の最たるものが、原発であり、また地域独占という電力形態であることは明らかです。原発が極めてコストの高いものであるということは、シーメンス原発から撤退したことはもちろん、他にも様々な学者やジャーナリストなどが指摘するところであり、しかも日本の電力料金は総括原価方式であるため、日本の電力料金は諸外国と比べて非常に高く、このことが、多くの企業の圧迫となり、その分のコストを人件費の削減で埋め、併せて価格競争を行わせる背景となっているものです。大口需要家たる大企業はともかく、中小企業にとって、このような電力システムは、明らかな重荷以外のなにものでもありません。

 また、日銀は、「競争力と成長力の強化」のために、「民間部門がチャレンジ精神を発揮しやすい環境を規制・制度改革などを通じて整備することは、政府の重要な役割である」とも言っています。政府が行えるこのような規制・制度改革の最たるものが、発送電分離であることは、誰の目にも明らかです。発送電が分離し、電力自由化がなされるならば、再生可能エネルギー産業において、「民間部門がチャレンジ精神を発揮しやすい環境」が整備されます。

 おりしも、先日の1月24日、日経新聞電子版に「独の再生可能エネ大手、日本に本格参入」と題した記事が掲載されました。

 「太陽光や風力発電を手掛けるドイツの再生可能エネルギー事業大手ユーイ(ラインラント・プファルツ州)は24日、自然電力(東京・文京、磯野謙社長)と合弁会社を設立し、日本市場に本格参入すると発表した。昨年7月に始まった全量買い取り制度を受けて、今後も市場の拡大が続くと判断した。(中略)ユーイは太陽光発電の設計・調達・建設(EPC)に特に強く、同分野では世界2位の導入実績を持つ」。

 という訳で、ついに再生可能エネルギーの先進国ドイツの大手企業が、日本に本格参入してくるわけです。それだけ、日本市場が有望だと判断しているからです。ここで脱原発を打ち出し、併せて発送電分離を行えば、日本の中小企業も一気に活気づくことは間違いありません。

 繰り返しますが、政府は日銀と、デフレ脱却のための共同声明を行っています。正式には、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」と題するものであり、そこには、次のようなことが書かれています。

 「デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、以下のとおり、政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組む」。

 このように、「政策連携を強化し、一体となって取り組む」と言っている以上、実行してもらわなければ困ります。日銀は、物価安定のためのアンカーであり、政府は、成長力強化のための規制・制度改革をやらなければなりません。

 そして、脱原発発送電分離ことは、まさにデフレ脱却のための要なのです。