日経平均株価は大幅下落、一方で太陽光発電関連の株価は飛躍的な上昇

 昨日、日経平均株価はマイナス2・56%、値幅にすると278円もの大幅下落となりました。1日でこれだけ下落するのは、2011年8月以来のことです。このような大幅下落の要因となったのは、何よりも為替です。一昨日、88円台まで戻ってきた円は、昨日更に円高に振れ、87円台まで戻りました。これが日経平均大幅下落の最大の要因です。

 ところで、昨日下落したのは日本株だけではありません。アジアでは、中国・香港・韓国・台湾、またヨーロッパでもフランス・ドイツが下落し、そしてニューヨークの原油も大幅に下落しています(ただ、ニューヨークの原油に関しては日本とはかなり時差があるので、これは一昨日ということになりますけど、とにかく原油も下落しました)。

 ともかく、これはいったい何なのか? 一言でいえば、これまであまりにも上がり過ぎたことの調整だと思います。これまでにも調整的な売りは何度かありましたが、しかしいずれも規模の小さなものであり、それではまだ調整不足は否めません。何故これが調整かと言いますと、最大の理由は、中国です。

 とにかく、中国株専門のプロによる今後の中国市場の展望が、とことん強気一辺倒なのです。ちなみに、ここで言う中国株専門のプロとは、日本の中国市場リサーチ会社のアナリスト、そしてもちろん上海・香港のアナリストを指しますが、彼らによる中国市場の展望は、とにかく強気です。これについては、CSのアジア株専門番組「ASIAエキスプレス」が、日替わりでアナリストを登場させて相場解説や電話リポートを行うので解りやすいのですが、今年に入って、一度として弱気な見解を聞いたことがありません。昨日も、TSチャイナ・リサーチの田代尚機さん、そして電話リポートでSMBCフレンド証券の何紅雲さんが今後の中国市場の展望を語っていたのですが、いずれも今回の株価下落はこれまで急ピッチで株価が上がり過ぎたことの調整であり、今後必ず株価は上昇するという見方です。僕自身も、中国経済の今後について独自の見解を度々披露してきましたが、まったく同じ思いを持っています。

 そして重要なことは、アメリカが世界貿易の中心であった時代というのはリーマンショックをもって終わっており、いまや世界貿易の中心は中国であるということです。中国経済が上昇する以上、資源まで含めて世界経済全体がそれに引っ張られていくというのが、今後の貿易の姿です。

 実際、日本株も既に再度の上昇を開始しています。その理由も為替です。日本時間で日付が変わるちょうど少し前から、円は再度円安方向で動いています。そしてそれに合わせ、シカゴ・マーカンタイル取引所で売買される日経平均先物の値段も、急カーブで上昇し、一時1万600円を割っていたのが、1万700円台目前まで回復しました。

 もう1つの理由として挙げられるのが、原油です。ニューヨークの原油の場合、日本とはだいぶ時差があるので、取引時間的には1日ずれるわけですけど、一昨日大幅に下落した原油は、昨日(日本時間では今日)になると急回復し、たった1日で96ドルも上昇しているのです。

 ところで、一昨日・昨日と立て続けに円高に振れた理由として、自民党の甘利経済財政大臣、石破幹事長が、相次いで、行き過ぎた円安への警戒感を述べたことにあると盛んに報道されています。しかし、これについては疑問が残ります。

 というのも、何故ここに来て自民党の幹部が立て続けにこのような発言をするのか、ということです。実は甘利氏の発言について、それが英語にどのように翻訳されたのかについて、一昨日岡村友哉さんが、興味深いことを言いました。それは何かというと、米メディアによる甘利氏の発言の翻訳が、デタラメだと言うのです。過度の円安を警戒するという趣旨の発言が、これで円は適正値になったとか、とにかく中学生でもこんな英訳はしないだろうというヘンテコな英語に訳しているのです。一旦為替の動向を調整するために、無理やり誤訳したのかと疑いたくなるほどです。

 それともう1つ、石破氏に関しては、そもそも政府の人間ではありません。単なる幹事長に過ぎないのです。このような、政策に対しなんら権限のない人間が何を言おうと、それが国際的な領域で大幅に為替相場を動かすほどの力を持つのか、ということです。

 さて、ここからは昨日の東証1部の取引の内容に移ります。まず売買代金ですが、昨日は更に金額が膨らみ、実に2兆260億円にものぼりました。そして具体的な銘柄や業種に関してですが、なにしろ昨日は大幅に株価が下落していますので、まずは業種別下落率の上位5業種から見ていきます。以下が、昨日の下落率上位5業種です。

     1海運       −3・93%
     2不動産      −3・69%
     3証券・商品    −3・43%
     4保険       −3・34%
     5繊維製品     −3・18%

 まず、下落率1位の海運ですが、これは一昨日は上昇率で1位でした。ちなみに、一昨日の海運の上昇率は、「+3・85%」です。この数字と昨日の下落率を較べていただけるとよく解ると思うのですが、上昇と下落の幅が、殆ど同じなのです。つまり昨日の海運株の下落は、単に一昨日上がり過ぎたものが戻っただけなのです。先程、今年に入っての日経平均の上昇率は5%ほどという話をしましたが、海運株に関して言うとその上昇幅は抜けていまして、海運大手の商船三井川崎汽船はともに20%、郵船も10%ほど上昇しています。これはたった半月の間としては、いくらなんでも上昇し過ぎです。

 また、昨日の下落率の2位である不動産は、昨年12月に猛烈に上昇した業種です。不動産は、昨年実に80%以上も上昇しているで、これは上昇し過ぎどころか完全にバブル的です。不動産に関しては、調整云々以前に、下落はそもそも当然です。3〜5位の証券・保険・繊維にしても、いずれも上昇が目立っていた業種なので、一定規模で下落し、調整が入るのは当たり前でしょう。

 さて、次に、昨日の売買高の上位10銘柄です。

    1みずほ
    2マツダ
    3長谷工
    4オリコ
    5アイフル
    6三井住友建設
    7三菱UFJ
    8サニックス
    9野村証券
   10川崎汽船

 相も変わらずという銘柄がズラリと揃いましたが、1つだけ例外があります。それは、サニックスです。実は昨日の売買高上位10銘柄は、軒並み下落したものばかりなのですが、そのなかで唯一上昇したのが、サニックスです。しかし、サニックスは単にこのなかで唯一上昇したというだけでありません。昨日、サニックスの株価上昇率は、1700にも及ぶ東証1部上場企業全体でも、第1位なのです。で、このサニックスは何をやっている会社なのかというと、これが太陽光発電事業なのです。

 実は昨日、東証1部は、全33業種すべてが下落するという非常に珍しい日だったのですが、そんななか、太陽光発電を手掛ける企業だけは、やたら株価が上昇したのです。以下が、その主なところです。

    サニックス    +28・67%
    高島        +6・40%
    三晃金属      +6・33%
    エスバイエル    +4・14%

 サニックスが異様な伸び率のため、他の伸び率は低く映るかもしれませんが、しかし東証1部全体は一昨年8月以来の大幅下落であったわけで、そのなかでこれだけの株価上昇を実現したのは、まさに驚異的といえるでしょう。

 いったい何故昨日は太陽光発電関連の企業に限ってこんなに株価が伸びたのか、それはまったく解りません。そのへんは非常に謎なのですが、ともかく大幅に株価が上昇したことは事実です。この分野については、是非今後も大幅な上昇を期待したいものです。もちろん、短期的な上昇ではなく、20年・30年に渡って大いに伸びることを期待します。