人民元が連日で史上最高値を更新、一方インド株は2万ルピーの大台に到達、また東南アジアのⅤIP3ヶ国は中間層が2020年までに7倍になる見込み

 3連休明けの東京市場ですが、日経平均株価は金曜の終値からプラス0・72%上昇の1万879円で取引を終えました。ただ、既に皆さんご承知のように、この3連休中も、シカゴ・マーカンタイル取引所などでは日本株の売買はしっかり行われております。日経平均は、3連休明け火曜朝9時の時点では、1万900円台に乗っておりまして、つまりこの時点で既に大幅上昇であり、一方で日本時間の取引だけを見ればそこからは下落しているという、昨秋以来お決まりのパターンです。

 この日経平均上昇の最大の駆動力は、なんといっても円安です。この3連休中に円安は更に進み、円は対ドルで一時89円台まで行きました。しかし、昨日の昼頃から円高になり、それが日本時間の取引における日経平均の下落につながったものです。

 ところで、この円安にも絡むことですが、昨日CSの株式市場分析専門番組「ラップ・トゥデイ」において、岡村友哉経済解説員が非常に重要な指摘をしました。岡村さんは、先日も日本株に関するゴールドマン・サックスの煽りや野村証券の暗躍などを暴露した方ですが、その岡村さんによると、昨年11月半ばの衆院解散以降、日経平均の上昇幅2200円のうち、実に1080円が、月曜など週明け初日によるものだというのです。

 これはどういうことかといいますと、円安が主に進むのは、日本人がお休みしている土日祝日に集中しており、そうして日本人が休んでいる間に海外でヘッジファンドが盛んに円を売り、併せて日本株の上昇もこの週末にかけて特に集中的になされているということです。もしも一連の円安が安倍発言によるものであるならば、円安は平日にこそ進まなければなりません。しかし現実には、円安は、平日よりも週末に進む方がずっと多いわけです。このことは、一連の円安が、基本的にアベノミクスとはまるで関係ないところで進行していることを、あらためて裏付けるものです。

 そして岡村さんは、これに加えて更に重要な指摘を他にも2つしています。まず1つ目ですが、彼はこの円安について、「これはみんな解っていることですけど、あんまり円安になると原材料や燃料の価格が上昇して、国民生活は苦しくなる、こんなの日本人はみんな解ってるわけで・・・」と堂々と発言しました。言うまでもなく、大手メディアや経済学者や金融アナリストは、このような岡村さんの発言とは、真逆のことを言い続けてきました。円高を是正して円安にすることが景気回復につながるのだと、彼らはそのような報道や解説を延々と繰り返してきたわけです。岡村さんは「日本人はみんな解ってる」と言いましたが、しかし大多数の日本人は、延々と繰り返される「円安=景気回復」という図式の方こそ信じてしまっている状況です。また、なかには過度の円安が原材料・燃料価格の高騰につながるという指摘をする論者もいるわけですけど、しかしそういう論者、とりわけ金融アナリストに関しては、決まってその後、「円安になると燃料価格が高騰しますので、だから安全が確認された原発から速やかに再稼働を・・・」と続けるわけです。そんななか、岡村さんのように、あけっぴろげに堂々と円安の弊害だけを指摘する人は極めて貴重です。

 また、更に岡村さんは、「アベノミクスの弊害と言いますか、いまは、株を売ってみよう、円高にかけてみよう、そういう投資家が悉く潰されてしまう」とも発言しました。そうして、市場のトレンドがほぼ一方通行になっていることに警鐘を鳴らしているのですが、これもまた重要な指摘です。昨年11月半ばの解散・総選挙以降、日本株や為替に関して、デタラメな報道とデタラメな解説が横行していますが、そんななか、岡村さんは、個人投資家や市民に対し、正確で適切な情報を提供する、数少ない人物と言えるでしょう。

 さて、ここからは昨日の取引の具体的な中身について見ていきます。まず売買代金ですが、昨日も1兆9501億円という、相も変わらず2兆円に迫る大変な金額が投入されています。そして株価も上昇していますので、これにより200日移動平均からの乖離率は19・17%へ上昇しました。冗談抜きで、20%台目前のところまで来ています。また取引の過熱感を示す騰落レシオも、157・71と、史上最高水準にあります。

 一方、個別銘柄ですが、売買高の上位は、相も変わらず、殆ど同じ顔ぶれです。以下が、昨日の売買高の上位10銘柄です。

   1長谷工
   2みずほ
   3マツダ
   4シャープ
   5オリコ
   6三井住友建設
   7アイフル
   8三菱UFJ
   9野村証券
  10板硝子

 硝子メーカーの板硝子が入ってきましたが、それ以外は何ら変わり映えのない銘柄ばかりです。

 一方で、業種別では、昨日はまたしても海運株の上昇が非常に目立ちました。既に何度も申し上げているように、貿易における物流を主な業務とする海運というのは、今後の世界貿易がどうなるかの目安であり、よってこの海運セクターが上昇するということは、今後世界貿易が活発化するという先触れなのです。以下が、昨日の業種別騰落率の上昇上位5業種です。

   1海運        +3・85%
   2鉱業        +2・17%
   3医薬品       +2・11%
   4機械        +1・96%
   5非鉄金属製品    +1・86%

 見てお解りの通り、海運の上昇率は突き抜けています。そして医薬品を除くと、他はすべて世界貿易が活発化することの恩恵を受ける業種ばかりというのも特徴です。一方で、昨日は、ここ1・2年、非常に不振が続く日本の主な電機メーカーの株価上昇も目立ちました。

  パナソニック   +2・72%
  NEC      +4・08%
  オリンパス    +7・67%

 ちなみに、ソニー富士通も小幅ながら株価は上昇しています。そして、これら電機メーカーに共通することとして、円安から円高になった日本時間の取引中に株価が上昇しているということです。トヨタやホンダなど大手自動車メーカーは、為替が円高に振れたのに合わせて、日本の取引時間中は株価が下落しているのですが、しかしパナソニックなど電機メーカーは、ソニーを除き、それ以外はすべて日本時間中に上昇しているんです。考えられることとして、新興国の景気回復に伴い、売上の上昇が見込めるとか、あるいはあまりの業績不振から株価が下がり過ぎているためお手頃価格だからそろそろ・・・、などの要因が挙げられるだろうと思います。

 いずれにせよ、何より海運セクターがうなり登りで上昇していますので、世界貿易活発化に伴い、全体的に需要が拡大するだろうという見通しがあるのは、まず間違いありません。

 そして、それを更に裏付けるニュースが、先週末以降、中国とインドから立て続けに入ってきました。

 まず中国ですが、昨年末以来上昇する一方の人民元は、ここに来て益々その勢いを増し、連日で史上最高値を更新しています。その理由は、言うまでもなく中国の景気回復によるものです。そして中国株も更に上昇しています。先週は、調整的な売りが出て株価が下落する場面もあったものの、しかし日本が成人式だった月曜日、上海総合指数は実に3%という物凄い上昇で、それを受け昨日も上海市場は上昇しました。

 中国では、今週末にも、政府による今年の鉄道インフラ投資の具体的な金額が発表されるのではないかという観測も飛び交っていて、今後中国株は、より一層上昇幅を拡大しそうな勢いです。

 またこれはCSのアジア株専門番組である「ASIAエキスプレス」が報じたのですが、それによると、中国の政府系投資信託会社の社長が、「アメリカ国債は優良資産ではない」と発言したそうです。至極もっともな見解だと思いますが、それを中国の政府系投信の社長が言うあたりが、高く評価できると思います。是非、日本でもこのような声がもっと挙がって欲しいものです。ちなみに、現在世界の主要な投資家のなかで、アメリカ国債を最も信頼していないのは、疑いなくジム・ロジャーズでしょう。

 一方インドですが、こちらは昨日の取引時間中に、ムンバイのインド株が一時2万ルピーの大台に乗りました。これはちょうどアラブの春が勃発した2年前以来の高値です。インド株も、その後のユーロ圏債務危機の影響を受けて下落に転じていたのですが、しかしインド株も昨年の途中から再び上昇しています。インド株の上昇は他の主要国よりもずっと早く、ここは昨年の6月がボトムであり、この時期におよそ1万6000ルピーまで下落したのですが、しかし6月以降はほぼ一本調子で上昇し、ついに2年ぶりに2万ルピーの大台を回復した次第です。

 くわえて、ASEAN諸国からも、更なる需要拡大が見込める報告が入っています。それは主に、ベトナムインドネシア、フィリピンの頭文字をとったVIP3ヶ国に関するものです。以下は、日経新聞電子版1月16日付の記事です。

 「東南アジア主要5カ国で年間の家計可処分所得が1万5千ドル以上の中間所得層・富裕層の人口は2009年時点で約5千万人。このうち企業誘致などで先行したタイやマレーシアが6割を占めるが、ここに来てベトナムインドネシア、フィリピンの頭文字を取った『VIP』で所得が急拡大している」。

 「日本貿易振興機構によると『VIP』では20年までの10年間で中間所得層・富裕層が約7倍に膨張。『一億総中流』を達成した1960年代の日本の人口に相当する1億人の購買層が新たに誕生する計算だ。同5千〜1万5千ドル未満の中間層予備軍も1億人増え、2億2千万人に達する」。

 「この3カ国は人口構成が若いという特徴がある。65歳以上の人口は5%前後で高齢化とは当面無縁。逆に14歳以下は2〜3割を占める。これが域外企業の投資を呼び寄せる要因の一つになっている」。

 という訳で、中国〜ASEAN〜インドという30億人にのぼる地域は、今後益々成長が加速する一方です。そして、これらの地域は、自らが発展するうえで、何よりも必要としているものこそ、日本の技術であり、また日本からの投資です。

 日本にはTPPへ参加して欲しくない、日本にはアメリカ国債へ投資して欲しくない、それを最も強く願っているのは、まさにこれらアジアの新興諸国です。そして、彼らの願いは、我々日本の利益にもなるものです。