2013年の中国新車販売はリーマンショック以前の段階まで戻る見込み、一方でアメリカは超巨額の貿易赤字を記録

 昨日、緊急経済対策というものの具体的な中身が出てきましたが、これはつまるところ「参院選対策」以外のなにものでもないですね。それ以外、特に言うことはないです。

 さて、その昨日の取引ですが、昨日は各国が上げたり下げたりまちまちであるなか、日本株だけは異様に上昇しました。無論、それは何よりも円安です。昨日は、朝の6時頃から急に円安が進みまして、6時から8時過ぎの2時間ほどで大きく為替が動き、円は一時89円台まで突入しました。さすがにその後は少し戻って88円台後半で推移したのですが、それにしても相当に円安が進んだことは間違いないです。

 ところで、NHKの夜7時のニュースなどは、この期に及んでまだ日銀への追加緩和期待から円安が進行・・・などと言っています。円安については11月からとにかくそれしか言ってないのですが、しかしそんな「期待」だけで、80円ぐらいだった円が89円台まで行くわけないのです。この間、ヨーロッパ・アジア・オーストラリア・南米、株価は全部急上昇したし、原油も上がりました。だから円安が急加速しているわけで、中国の景気回復を最大の要とした世界貿易活発化こそ円安の最大の要因であるということは、確実なのです。実際、昨秋以降、韓国ウォン、豪ドルなど新興国通貨はどれも軒並み上昇する一方であり、そして実は、人民元もかなり上昇しています。日銀への追加緩和期待から人民元が急上昇するなど絶対にありえません。これら一連の金融市場の動きは、中国を中心とした新しい世界貿易の枠組みが出来つつあることを如実に物語っているでしょう。以前ご紹介したジム・ロジャーズのインタビューなどからも、そのことは明確に窺えます。

 ところで、先日、東証は12月第4週の投資家別売買動向というのを発表しました。これで12月の売買の様子はすべて明らかになったのですが、衆院選後、株価は怒涛の上昇をしたにも拘わらず、国内の個人投資家に関しては、11月の後半に続き、12月の第1〜4週まですべて大幅な売り越しということが判明しました。つまり、解散・総選挙が決まって以降、国内の個人投資家(当然ながらこの人たちこそは衆院選有権者です)は、ひたすら株を売りまくったということです。という訳で、本来なら外国勢は12月の終盤はクリスマス休暇に入っている筈なのに、しかし昨年末はその常識はまったく通らず、彼ら外国のヘッジファンドは年末のラストまで、日本株をとにかくひたすら買い漁り続けたということです。

 で、昨日の東証の取引ですが、過熱感は更に高まる一方です。昨日、売買代金は2兆1137億円にのぼりました。このうち、昨日に関してはSQというものに関する額が1818億円ほどあると推定されているのですが、このSQは無視して問題ないので、実質的には1兆9319円ということになります。要するに、ここ数日とほぼ同じ金額と捉えていただいて構いません。

 という訳で、依然としてとてつもない金額が投入されています。これによって、200日移動平均からの乖離率も急上昇し、この乖離率は昨日でなんと18・37%を記録して、いよいよ20%台が目前というところまでやってきました。また取引の過熱感の指標である騰落レシオも155・91まで上昇しました。

 そして、売買高の上位ですが、これがまた相も変わらずこの面子か・・・、というお決まりのところがズラリと並びました。以下が、昨日の売買高上位10銘柄です。

    1みずほ
    2マツダ
    3シャープ
    4オリコ
    5アイフル
    6三菱UFJ
    7野村証券
    8長谷工
    9東電
   10川崎汽船

 シャープが3位に来ましたが、これはスマートフォンへの導入で期待が高まるIGZOという新技術の影響でしょう。あとはお決まりの銘柄ばかりです。マツダ川崎汽船以外は、すべてアベノミクス内需型癒着産業です。

 一方で、昨日は新たに2つほど、見過ごせない特徴がありました。まず1つ目は、ファーストリテイリングです。昨日、日経平均の上昇は、値段にすると148円の上昇だったのですが、このうちファーストリテイリングだけで実に日経平均を43円も押し上げたのです。以前申し上げたように、ファーストリテイリングユニクロを展開している企業ですが、このファーストリテイリングの大幅な上昇は、ひとえにアジア各国の消費が上昇していることによるものです。

 と言いますのも、昨日ファーストリテイリングは決算の通期業績見通しを大幅に上方修正したのですが、それは何よりも昨秋のユニクロの海外事業が売上で51%増、営業利益で53%増という物凄い伸びだったためです。そしてユニクロによれば、「特にアジアでの業績が計画を上回り、好調。欧米事業は計画通り」ということなので、このことは、これまで何度もお伝えしてきた東アジア・東南アジア各国の景気の上昇を受けてのものであることは容易に推察できます。もちろんユニクロ自身の経営努力も当然あるでしょうが、しかしそれだけでここまで業績が伸びるものではありません。

 しかし、もっと重要なのは、尖閣問題による日中関係の悪化がなければ、自動車をはじめとする他の大手輸出企業なども、相当にアジア各国の成長の恩恵を受けていた筈だということです。特に今後中国は、年の後半に向けて景気は更に上向いていくことが予想されますので、一刻も早い日中首脳会談の実現が待たれます。公共事業をばらまくより、日中関係が正常化する方が日本経済にとってははるかに重要です。

 そして、昨日の取引でもう1つ特徴的なのが、衆院選以降、業種別騰落率の上位5業種のなかに、はじめて石油・ガスが入ってきたことです。原油価格もまた昨年11月の半ばからジワジワと上がり始め、そして12月に入るとその上昇のピッチは更に急になったのですが、それでも東証の株価上昇率の上位に石油・ガスが来ることはなかったのです。しかし、ついにこの石油・ガスも上位に顔を出してきてしまいました。今後、原油など資源価格が更に上昇することは確実ですので、日本はこの燃料・原材料費の上昇にどう対処していくかも、重要な課題といえます。言うまでもなく、発送電分離の早期実現は不可欠です。

 ところで昨日は、2012年の中国の新車販売の数字が発表されました。以下は、それに関する日経新聞電子版の記事です。

 「中国汽車工業協会が11日に発表した統計によると、12年の新車販売台数(中国国内生産分、工場出荷ベース、商用車、輸出を含む)は11年比4・3%増の1930万6400台。米国(1449万台)を上回って、4年連続で世界最大の自動車市場となった。(中略)中国市場の13年の新車販売について、中国汽車工業協会は7%増の2065万台と予測する」。

 この汽車工業協会というのは、日本語にすると自動車工業協会となるのですが、それはともかく、この数字から、中国の新車販売が確実に持ち直してきているのは明らかです。以前申し上げましたように、2011年に中国の新車販売の伸びが大幅に鈍化した理由は、その前の2年間に出された補助金によって需要が先食いされただけに過ぎないので、2009年と2010年のたった2年で900万台も伸びる方がむしろおかしいわけです。しかし、2012年の新車販売の伸びは前年の2・5%から4・3%へと上昇し、確実に元に戻りつつあるわけです。ただ、それ以上に重要なのは、パーセンテージではなく実数でして、中国自動車工業協会による今年の新車販売は、135万台の増加を見込んでいます。2002年から2007年の6年間で700万台の伸びだった以上、1年で135万台の伸びという見込みは、中国の新車販売の伸びが、リーマンショック以前の段階に完全に戻ることを意味します。

 そして、中国のように高成長の途上にある社会の場合、新車販売の伸びこそは、どれだけ中間層が拡大しているかの極めて重要な要素ですので、ここからも、今年の中国の成長の度合いがはかれるというものでしょう。

 一方で、昨日はアメリカでも重要な経済指標が発表されました。それは去年11月の貿易統計なのですが、これが事前の市場予想を大幅に超えるひどい数字が出てきました。以下も、日経新聞電子版の記事です。

 「米商務省が11日発表した11月の米貿易赤字(季節調整済み、サービスを含む国際収支ベース)は487億3100万ドル(約4兆3400億円)で、前月比15・8%増えた。市場予測の平均(約418億ドルの赤字)を上回り、2カ月連続で増加した」。

 見ての通り、物凄い額の赤字です。アメリカは、たった1ヶ月で4兆3400億円もの巨額の赤字を計上しているわけです。この数字について、なかには、貿易赤字がこれほど膨らんだのは、それだけアメリカの個人消費が堅調だから輸入が増えたのであって問題はない、などという訳の解らない解説も出ているのですが、どう考えても問題であるに決まっています。こんな大量の赤字を当たり前のように出していて、それで財政もドルの信認もずっともつなどありえません。ちなみに、尖閣問題により日本製品が中国で不買運動にあったことを受けて、アメリカは中国市場での売上を思い切り伸ばしたにも拘わらずこれほど巨額の赤字を計上しているわけで、そうである以上、もし尖閣問題による日中関係の悪化がなかったなら、アメリカの11月の貿易赤字は更に拡大し、5兆円に接近していたことは確実です。

 そして、当たり前ですが、アメリカはどうにもならないこの巨額の赤字を何とかするべく、起死回生を狙ってTPPを日本に持ちかけているわけです。この巨額の赤字を何とかするには、それだけ市場規模も金融資産も共に巨大な国を相手に儲ける以外にどうしようもないわけです。中国がアメリカとの自由貿易などに乗ってくるわけがないので、他に要件を満たす国など、1億以上の人口と1400兆円もの金融資産のあるGDP世界第3位の日本ぐらいしかないわけです。大手メディアや経済学者や金融アナリストたちは、アメリカの借金埋め合わせのためのTPPだというあまりにも当たり前のことさえ指摘せず、一方でそんな彼らは、確実に上昇軌道に乗りつつある中国経済の真実を隠蔽し続け、逆にアメリカは好調だなどと事実に反することを述べてTPP参加へ世論誘導しているという有様です。

 もしISD条項によって、公的医療保険や共済などがビジネスを妨げる非関税障壁だとして世銀に訴えられたらどうするのか? 公的医療保険や共済が破壊されたら、日本の社会福祉などはズタズタになります。それ以外にもTPPは危険に満ち溢れており、参加することは国益を失うだけだというのは、既に様々なフリージャーナリストなどが指摘する通りです。