中国の輸出は絶好調! しかしそれを報じない日本の大手新聞の大罪

 昨日、日本時間の午前中に昨年12月の中国の貿易統計が発表され、これがプラス14・1%という大幅な伸びでした。一方で昼頃から為替は一気に円安へと動きましたが、これが中国経済の上昇による世界貿易活性化の見込みを受けてのものであることは、まず確実です。

 なので、当然のごとく昨日は日経平均株価も上昇し、前日の終値から+0.70%上昇の1万652円で取引を終えました。ちなみに、この日経平均の伸びを、他の東アジア諸国の株価の伸びのなかで見てみると、次のようになります。

  日経平均    +0・70%
  韓国総合    +0・75%
  台湾加権    +0・94%

 という訳で、昨日進んだ円安も、日本株の上昇も、その理由は圧倒的に中国の景気回復によるものであることは、誰の目に明らかです。このことは昨日の株価上昇の1番の要因が、海運と鉄鋼であったということからも、はっきりしています。

 また昨日はニューヨーク・ダウも株価が上昇しているのですが、これもひとえに中国の景気回復によるものです。昨日、アメリカでは各企業の先陣を切ってアルコアが決算発表をしました。アメリカでは毎シーズン、決算発表はアルコアから始まることになっていまして、シーズンのしょっぱなということで、毎回この企業の決算発表には非常に関心が集まるのですが、その席でアルコアから、「中国の景気回復によって、2013年のアルミ需要は増大が見込める。今後の中国経済に期待」という言葉が出てきたのです。昨日のニューヨーク・ダウの上昇が、このアルコアの決算を受け、中国の景気回復への期待がより一層高まり、それが他の業種・他の業界へ波及したことによるものであるということは、もはや世界中の市場関係者の知るところといっていいでしょう。実際、そのように報じられています。

 一方で、この午前中に発表された中国の貿易統計の数字について、はたして日本の大手新聞はどのような報道をしたのかと思って紙面を見てみますと、まず朝日新聞夕刊ですが、昨日の朝日の夕刊にこの記事はなく、代わりに中国関連の記事として、「尖閣監視を常態化 中国が方針」という見出しのものがあるだけでした。次に毎日新聞の夕刊を見たのですが、毎日の夕刊にもこの記事はなく、その代わり「日中貿易総額3・9%減 尖閣で関係悪化」という見出しの記事があり、本文を読むと、「中国の貿易低迷は、日本経済再生や世界経済の回復に影響を与えそうだ」とありました(当たり前ですが、この毎日夕刊の記事は大嘘です)。

 ならば朝刊はどうかと見てみると、朝日新聞の今日の朝刊には、「中国貿易伸び悩み 対日輸入も影響」というもので、本文を読むと、いかに中国の経済が低迷しているかということが延々と書かれていまして、記事の最後の方でちょびっとだけ12月の統計に触れるに過ぎない、というものでした。こんな最後の方にチロッと触れる程度では、中国経済によっぽど興味のある人間以外はまず読みません。一方、毎日新聞の朝刊はもっとひどく、根本的に中国の12月の貿易統計についての言及がありませんでした。信じられないのですが、まったく記事になっていないのです。それ以外のNHKなど他の大手メディアの報道は一切見ていないのですが、朝日と毎日がこうですので、あとは推してしかるべしというところでしょう。

 あまりのことに愕然とします。この僕のレポートを日々読んでくださっている方なら既にお気づきの通り、いまや中国の景気回復は、世界中の市場におけるコンセンサスといっていい状態です。しかし、ただ日本だけが中国の経済についての真実を報道せず、いまだ中国は世界経済の足を引っ張っているかのような報道に終始し、一方で尖閣周辺の状況についてはマニアックなまでに報道して、ナショナリズムを煽っている始末です。

 ちなみに、CSのアジア株専門番組「ASIAエキスプレス」では、もちろん中国の貿易統計のことはトップニュースで報道しているのですが、それ以外ではいったいどこがまともにこのことを取り上げたのか定かではありません。明らかなのは、大手メディアの経済報道は、絶対に信用してはならないということです。

 ちなみに、中国の景気回復は、今後更に上昇軌道に乗ってくることはほぼ確実な情勢です。何故なら、周近平・李克強政権が本格的に始動するのは今年3月の全人代からであり、そしてこの政権の手並みを見定めるべく、中国13億人のみならず、世界中がその動向を注視しているからです。なので、大型のインフラ投資政策を打ってくることはほぼ間違いなく、更にそれ以外の要素もあります。これについては、また後日報告したいと思います。

 さて、ここからは昨日の東証の取引の内容を見ていきます。まず売買代金ですが、相変わらず昨日も活況を呈し、その金額は実に1兆9712億円にのぼりました。株価上昇が目立ったのは先程も申し上げたように、何よりも海運と鉄鋼だったのですが、一方で売買高に関しては、相も変わらずアベノミクス内需系癒着産業が多数を占めました。以下が、昨日の売買高の上位10銘柄です。

     1みずほ
     2東電
     3マツダ
     4三菱UFJ
     5長谷工
     6オリコ
     7川崎汽船
     8三井住友建設
     9アイフル
    10野村証券

 マツダ川崎汽船を除けば、すべてアベノミクス系の銘柄です。もうこのへんはすっかりお馴染みになりました。ところで、昨日の東電ですが、これもまた例によって明らかにヘッジファンドによる投機的な売買です。というのも、昨日の東電株は、終値こそ前日と変わらず、まったく値が一緒なのですが、しかし日中の取引時間中に急激な変動がありました。チャートを見ますと、まず午前中に、突然株価チャートが垂直で猛烈に上昇しています。そしてその後はほぼ横ばいで推移したのですが、午後2時過ぎになって今度は株価が垂直に下落しています。こういう垂直なチャートというのは、超短期間で相当な金額な投入されない限り決して現れないものであり、アメリカのヘッジファンドの手口と見てまず間違いないです。まさにマネーゲームの極致といえます。

 さて、一方の海運などですが、こちらは明らかに中国の景気浮揚による世界貿易活発化の見込みを受けての買いです。以下が、昨日の主な海運株の上昇幅です。

    郵船      +4・43%
    商船三井    +3・40%
    川崎汽船    +6・25%
    第一汽船    +13・58%
    乾汽船     +13・55%

 第一汽船と乾汽船は上の3つと較べれば小さい会社なので、こういう時価総額の小さいところは上がるときはグンと上がるのですが、それにしても物凄い伸びです。

 また、以下は昨日の業種別騰落率の上昇上位5業種です。

    1海運       +4・80%
    2鉄鋼       +4・32%
    3保険       +3・88%
    4精密機器     +2・15%
    5繊維製品     +2・14%

 実質金融機関である保険を除けば、他はすべて世界貿易活発化の恩恵を受ける業種ばかりです。海運と鉄鋼は特にそうで、このあたりの株価上昇は、ほぼ全面的に中国経済の上昇によるものです。先程の売買高上位の金融株や建設株はすべてマネーゲームと癒着の産物ですが、一方で海運を筆頭とするこれらの業種の株価上昇は、実需に根差した本物の上昇です。しかし、尖閣問題による日中関係の悪化がなければ、これらの株価はもっと上がっていることでしょう。

 ちなみに、こういう事情による以上、これらの業種は、当然ながら上海・香港の市場に上場している中華系企業も、大幅に株価が上昇しています。以下は、香港上場の主な海運関連企業の昨日の株価上昇率です。

    チャイナ・コスコ   +7・25%
    中海コンテナ     +3・52%
    中海発展       +5・99%

 という訳で、今後の世界貿易は、中国を中心として展開されることはまず間違いありません。なにしろ、ニューヨーク・ダウでさえ、これが要因で株価が上昇しているのです。一方で、このような世界貿易の活発化は、原油など資源価格の押し上げと、より一層の円安にもつながります。それはつまり、日本にとっては外国から輸入する原材料価格が上がるということです。

 なので、またしても同じ結論になりますが、日本経済にとっていま何よりも必要なのは、日中関係の改善であり、また発送電分離を行って電力料金に市場メカニズムを導入することであり、そして日銀は円安誘導などせず、極めて抑制的な金融政策を行うことです。

 なお、最後になりますが、昨日の日経新聞電子版に、このほどグーグルが風力発電に2億ドル(176億円)を投資という記事が掲載されました。以下が、記事の全文です。

 「インターネット検索最大手の米グーグルは9日、米テキサス州風力発電所に約2億ドル(約176億円)を投資したと発表した。ネット検索などに不可欠なデータセンターで大量の電気を使うグーグルは2007年から風力や太陽熱発電など自然エネルギーへの投資を本格化。10年以降だけでも投資先は11カ所に達している」。

 「テキサス州西部で12年末に本格稼働した風力発電所『スピニングシュプールウインドプロジェクト』に出資した。発電能力は16万1000キロワットで、約6万世帯の利用電力を賄うことができる規模という。発電した電力は地元の電力会社に販売し、この売り上げにより投資を回収する計画だ」。

 「グーグルは自然エネルギーの普及加速や地域経済への貢献をこうした投資の理由として挙げているが、投資家の間では本業と関係が薄い分野への資金投下に対して厳しい見方もある。9日も声明で『(自然エネルギーは)投資先として有望で、リターンも魅力的だ』などとして理解を求めた」。