日本株について、ゴールドマン・サックスが本格的に煽りを開始、一方で暗躍する野村証券・・・・・・その先にある最低のシナリオ

 今回は、これまでの一連のレポートのなかでは、最も重要なものになったと思います。これがどういうことかについては、最後までお読みいただくとお解りになる筈です。是非1人でも多くの方にお読みいただきたく思います。

 さて、最低のシナリオについては1番最後にお伝えするとしまして、まずは昨日の取引から見ていきます。

 昨日の日経平均は、朝9時の取引開始の時点でいきなり前日の終値から102安でスタートしましたが、その後徐々に買いが膨らみ、結局終値は前日よりプラス0・67%高い1万578円で取引を終えました。昨日、株価がこのように乱高下した要因は、ひとえに為替です。夜間取引時間に円高が進み、円は一時対ドルで86円台まで行ったのですが、その後東証の取引時間が始まると円は売られ、再度円安に振れたことが、このような株価の推移を生みました。

 そして売買代金ですが、売買は依然として活況で、実に1億9394円にのぼります。また、昨日は取引の過熱感を示す騰落レシオも急上昇し、騰落レシオは昨日だけで実に+12・57%上昇し148・43まで来ました。この騰落レシオは年末休暇から正月休みを挟んでいったん落ち着いていたのですが、ここに来て再び急上昇という具合です。

 ところで、昨日は、CSの株式市場分析専門番組「ラップ・トゥデイ」のなかで、相場解説を行った日経CNBCの岡村友哉経済解説員が、到底見逃すことのできない重要事項を3つも言いました。

 金融の世界に疎い方でも、ゴールドマン・サックスという名前はご存知だと思います。ウォール街投資銀行の老舗であり、そしてリーマンショックが起こった後でもなんら反省することなく、ニューヨークの中小金融機関へ脅しをかけた事実が「デモクラシー・ナウ!」にすっぱ抜かれたり、また昨年の春には、長年ゴールドマン・サックスに務めていたグレッグ・スミス氏が「何故ゴールドマン・サックスを去るのか」という手記をニューヨーク・タイムズに寄稿し、ゴールドマン・サックスの内部では顧客のことを「操り人形」と呼ぶという傲慢で強欲な社風を告発するなど、とにかくカネのためには何でもやるというような、金融マフィアの総本山と言ってもいいところです。

 で、前述の岡村さんによると、ゴールドマン・サックスは今年1月7日付けのレポートで、TOPIX(東証株価指数)の今後12か月の見通しを大幅に引き上げ、1000ポイントとしたうえで、「2013年は日本の株価指数は最高のリターンを期待すると予想」したというのです。

 かつて、サブプライム債権をネタにアメリカの不動産価格がいかにバブルへなっていったかを見れば、このゴールドマン・サックスのレポートは、露骨な煽り以外のなにものでもないように思えます。S&Pなどの格付け会社にしてもそうですが、連中はこうやって、債権や株式などを実力以上に高く評価し、市場を煽っていくのです。

 そして、岡村さんが暴露した2つ目の見過ごせない点というのは、野村証券の動きです。岡村さんによると、日本のなかでは外国の投資家と最も太いパイプを持つ野村証券が、この1月10日から1月18日の期間に、外国の投資家のもとを訪問して日本株を直接売り込んでいくそうです。野村は、いわゆるキャラバン隊を結成し、そうしてロンドン、ニューヨーク、ボストンなどを9日間かけてまわるそうです。

 昨年来、僕のマーケット・レポートをお読みくださっている方々なら、野村の株への異常な物色、野村の株の異常な高騰については既にお馴染みになったかと思いますが、その裏には、こういうことがあったわけです。ちなみに、言っておきますと、日本で度々起きる増資インサイダー事件という不正取引ですが、この最大の仕掛け役も野村証券です。『週刊ダイヤモンド』は2012年9月8日号で「落ちた金融 証券・銀行の大罪」と題した特集を行ったのですが、それによると、野村こそは日本の金融の不正の中心にあることを盛んに告発し、のみならず、野村がヘッジファンドなどといかに密接な関係を持ち、いかに情報を漏洩しつつ癒着してきたかが詳細に論じられ、しかも野村はいまだになんの反省していないということも、徹底糾弾されています。ちなみに、2010年9月に発覚した東京電力の増資インサイダー取引も、野村が東電から増資を引き受けたうえで、その情報を漏洩したことによるものです。

 その野村が、自民党政権誕生以降のヘッジファンドによるバブル的な日本株買いを受けて、いよいよ本腰を上げてキャラバン隊を結成し、英米日本株を売り込みに行くというのです。なので、このキャラバンの行程が終わった1月下旬以降、東証の取引がどのようなものになるか、非常に憂慮されます。

 そして、昨日の取引の内容ですが、これに関しては、売買高の上位15銘柄が、殆どすべてを物語っているといえます。実に特徴的なものでした。後程解説しますが、まずは以下に挙げるのがその売買高上位15銘柄です。

   1オリコ
   2三井住友建設
   3みずほ
   4野村証券
   5マツダ
   6三菱UFJ
   7アイフル
   8長谷工
   9世紀東急工業
  10不動テトラ
  11川崎汽船
  12日立
  13東芝
  14神戸製鋼
  15三菱重工

 これは何を示しているかといいますと、マツダ川崎汽船神戸製鋼を除くと、あとは、金融・建設・不動産・原発プラントメーカー、これですべて占められているのです。更に、業種別騰落率の上位には、1位が証券で、あとは2位から5位までズラリと公共事業関連が並びました。つまり昨日は、露骨なまでの自民党相場だったということです。

 特に嫌なのは、売買高で、業種別にある程度まとまっているということです。その典型が原発プラントメーカーでして、14位の神戸製鋼を間に挟んで、12位・日立、13位:東芝、15位:三菱重工と見事に並びました。株価が上昇するにしても、少しは物色された株の数にばらつきがあるならともかく、ここまで接近しているということは、どうにも嫌な感じです。

 さて、ここでいよいよ、岡村さんが暴露した、見過ごすことのできない重要事項の3つ目です。実は前述の野村証券は、1月4日付けで2013年の日本株展望というのを出していまして、そのなかに、特に保有すべきコア5銘柄というのがあるのです。この5つというのが、とにかく大問題なのです。以下に挙げるのが、その5つの銘柄です。

    太平洋セメント
    日立
    IHI
    三菱UFJ
    三井不動産

 まず太平洋セメントですが、ここは言うまでもなく大手セメント会社、つまりゼネコンです。そして日立、もちろん原発プラントメーカーです。

 で、次のIHIですが、ここはかつて社名を石川島造船所といいまして、大日本帝国海軍に数々の艦艇を納入していたところであり、そして戦後も海上自衛隊の御用メーカーとして、数多くの護衛艦海上自衛隊に納入してきたところです。また一方で、原子炉内部に設置する圧力容器や格納容器などを製造する原発のメーカーでもあります。ちなみに、護衛艦などの船舶部門は現在分社化してるのですが、それでもJFEホールディングスと共に筆頭株主として君臨し、経営に大きく影響を及ぼしています。

 それに加えて、三菱UFJ三井不動産、以上の5銘柄を、野村証券は特に保有すべきコア5と指定し、この1月10日からロンドン、ボストン、ニューヨークへとキャラバンするわけです。

 そして1月4日に野村がこれらの銘柄をコア5に指定したことを受けて、ゴールドマンサックスは7日にレポートを発表し、「最高のリターンを期待する」というのです。つまり平たく言いますと、大手ゼネコン、原発プラント、原発機器、軍需産業海上自衛隊)、財閥系銀行、財閥系不動産、これらの株だけは持っておけ、何故なら「最高のリターンが期待」できるぞ・・・、という訳です。そしてこれこそ、アベノミクスの中心という訳です。こんな株が上昇したところで、日本が良くなるでしょうか? 良くなるわけがないです。しかし、まさにこれこそが、自民党政権をダシに、霞ヶ関や証券会社やウォール街ヘッジファンドなどが一体となって、企んでいることなのです。