11月半ば以降に起こっているのは世界同時株高であり、アベノミクスによるものではない

 現在、世界経済の動向は、再び大変化の予兆に満ちています。にも拘わらず、大手メディア・経済学者・金融アナリストたちは、このような変化について、著しく偏った報道、著しく偏った解説しかしていません。しかし、それについては後程詳細に論じるとして、まずは昨日の東証の取引から見ていきます。

 昨日の日経平均株価は、先週金曜の終値1万688円から0・83%下落し、1万599円で取引を終えました。これだけなら下落なのですが、ところが、昨日は、取引が始まった朝9時の段階では、日経平均は1万743円だったのです。つまり、この時点では、金曜の終値より株価は上なわけです。これまで何度もあった、外国時間(夜間取引)で上昇し、日本時間で下落というパターンが、また起こったということです。もう皆さんはこのパターンにはすっかり慣れたかと思いますが、それにしても、またか、という感じです。

 さて、その取引の内容ですが、とにもかくにも、日経平均は金曜の終値からは下落したわけですけど、しかし、これは単に下落したとは言えないのです。と言いますのも、昨日は、東証2部・東証マザーズジャスダックは、いずれもすべて上昇しているからです。昨日は、日経平均も含めた東証1部だけが下落したのです。

 具体的にどういうことか? 昨日は、これまでうなぎ上りで株価が急上昇していた、メガバンク・証券・その他金融(アイフルやオリコなど)、これらが軒並み下落したのです。しかし、無理もありません。たとえば野村証券などは、実に13日間連続で株価が上昇していたのです。この間の野村の株価上昇は、実に5割にも上ります。つまり、これら金融株は、これまでが上がり過ぎていたために、調整的な売りが出て、それにより下落したということです。このような、上昇し過ぎた銘柄・業種に調整的な売りが出るのは、株式市場ではよくあることなのです。

 また、昨日は自動車や電子機器メーカーなども売られました。しかし自動車は先週の金曜に見たように、年末から年始にかけてのこの業種の上昇幅も少し行き過ぎのところがありました。もちろん理由は円安の進行によるのですが、昨日はその円安もさすがに一服して、一時88円まで進んだ円は、87円台まで戻ってきました。自動車、更にキャノンなど電子機器メーカーの昨日の売りもまた、このような調整的なものを思われます。

 一方で、昨日は、売買代金・売買高の上位30銘柄のなかでは、商船三井川崎汽船三井物産住友商事コマツ、といったところの株価は上昇しました。これについて解説します。

 まず商船三井川崎汽船ですが、海運は業種別でも昨日は上昇率で第4位と、株価上昇が目立った業種です。既に何度も申し上げてきたように、海運というのは、貿易に関する物流が主な業務です。そして、貿易業といえば、商社もまた同様です。この点で、海運株の上昇と、三井物産住友商事の上昇は、リンクしているといえます。また、商社といえばもちろん資源取引であり、更に近年は新興国の社会インフラ事業にも進出しているわけですが、コマツというのは、建設機械の世界大手です。よってコマツは、このような商社のビジネスとも関連します。

 という訳で、商船三井川崎汽船三井物産住友商事コマツの上昇からは、新興国の社会インフラ事業の促進とそれにまつわる資源需要、更に資材その他の貿易の活発化、というのがはっきりと見えてくるわけです。

 また昨日は、ユニクロを展開するファーストリテイリングの株価も大幅に上昇しました。ちなみに、ユニクロも既に、中国をはじめとした諸外国において相当な規模で店舗を展開しているので、当然ながらファーストリテイリングもまた大手輸出企業のなかに入ります。このユニクロの株が大幅に上昇したということは、新興国の間で消費が上向いていることの1つの指標にもなるものです。

 一方、東証1部全体で見ると、見過ごせないのが昨日の売買代金です。昨日の東証1部の売買代金は、1兆8361円にのぼりました。ここ最近、1兆円台後半というのはすっかり当たり前になってきましたが、しかし、このような金額は、12月16日の衆院選投開票の以前には、到底考えられないものだったのです。この金額はどう見ても異常です。先程の社会インフラとそれにまつわる分野などは、明らかに新興国の成長という実需に支えられたものですが、とはいえ、この金額がバブル的なものであることは間違いありません。

 昨年末話題に上げたように、ついに欧米の年金基金までもが日本株に資金を投入し始めたというのは、もはやどう考えても明らかです。

 ところで、本日は、11月半ば以降における世界の株価の動向についてお伝えしようと思います。大手メディアは、日本株の上昇ばかり報道し、他の国の株価の上昇については殆ど報道せず、これらの株価上昇について隠蔽することで、自民党政権誕生による株価上昇を盛んに強調してきたわけですが、実際は、これまで何度も指摘してきたように、フランス株・ドイツ株、中国株なども、いずれも株価は急上昇しているのです。

 ところで、それ以外の国についてはどうでしょうか? 実は、11月半ば以上、株価が急上昇しているのは、GDPの大きい、これらフランス・ドイツ・中国だけではないのです。実に様々な国の株価も急上昇しているのです。以下は、世界の主要新興国における、昨秋以降の株価上昇率をまとめたものです。

  オーストラリアASX  +9%
  ブラジル・ボべスパ指数  +14%
  インド・ムンバイSENSEX  +8%
  韓国総合  +9%

 いずれの国も、11月半ば以降(つまり日本で言うところの衆院・解散以降)、株価が急上昇しているのがお解りいただけると思います。ちなみに、これら新興国の場合、いずれも昨秋以降、通貨が急速に上昇しています。つまり、輸出に不利とされる通貨高でありながら株高にもなっているわけで、通貨安・株高の日本と較べると、その株価上昇の内容は非常に濃いものと見ていいでしょう。

 一方で、以下は、11月半ば以降における、フランス・ドイツ・中国の株価上昇率です。

 フランスCAC40  +10%
 ドイツDAX  +11%
 上海総合  +11%(但し、12月以降なら14%)

 という訳で、いかがでしょうか? 昨年11月半ば以降日本株が上昇しているのは安倍氏が唱えるアベノミクスによるものだ、という大手メディア・経済学者・金融アナリストの報道や解説は、はたして正しいといえるのでしょうか? つまり、日本株の上昇というのは、本当は世界経済の変化の波に乗ってのものであるのに、しかしたまたま(?)11月半ばに衆院が解散したことで、日本株の上昇について、すべては自民党アベノミクスと呼ばれるものの手柄にすり替えられてしまっている、というのが実情ではないでしょうか? 電力株・銀行株・不動産株・ゼネコン株の上昇は、確かにアベノミクスによるものでしょうけど、しかしこれら癒着産業の株など、上がって欲しくないのです。

 ちなみに、このようなすり替えを行う大手メディアや経済学者、金融アナリストたちは、一様に、アメリカ経済は回復基調に入っている、ヨーロッパも中国も景気失速していまだに危ないものの、アメリカは期待できると言っています。しかし、本当にそうなのでしょうか? そうであるならば、アメリカの株価は、これまでに上げた国々の株価上昇を上回っていなければなりません。以下は、昨秋以降のアメリカ株の株価上昇率です。

 ニューヨーク・ダウ +6%

 ご覧になってお解りの通り、アメリカ株は、これまで紹介してきた、フランス・ドイツ・中国・オーストラリア・ブラジル・インド・韓国、これらと較べて、その株価上昇は低いのです。世界で1番大規模な金融緩和をおこない、そうして過剰供給されたマネーで無理やり株価を上昇させておきながら、アメリカ株の上昇はこのレベルにとどまっているのです。つまりどういうことかというと、主要先進国新興国のなかで、唯一アメリカだけがもたついているわけです。アメリカ株のもたつきは、範囲を去年の8月まで広げるとよりはっきりします。フランス・ドイツ・中国・オーストラリア・ブラジル・インド・韓国、これらの国々は、いずれも現在の株価は去年8月よりも上なのですが、しかしアメリカだけ、現在の株価は去年8月の値を下回っているのです。

 にも拘わらず、大手メディアの報道や経済学者、金融アナリストの解説では、アメリカの景気は回復していると言い、一方で中国は危ない、ヨーロッパはもっと危ない、世界経済は混沌としている・・・、そうして、頼りになるのはアメリカだという世論誘導がなされています。僕は昨年末、「突っ込みどころ満載だった朝日新聞12月29日朝刊1面の記事をカットアップする」というタイトルでレポートを書きましたが、大手メディアは、実際に起こりつつある世界経済の変動をまったく報道していません。特にNHKはひどいです。NHKの経済報道は、完全に大本営発表もいいところです。

 しかし、いまなら間に合うんです。TPPへの参加をやめ。中国をはじめとしたアジア諸国、そしてEUなどと連携を密にすれば、日本の経済は良くなります。

 実際のところ、日本は世界中からラブコールを送られているのです。もちろん、海に囲まれ、河川も地熱も豊富な日本にこそ、再生可能エネルギー推進の旗頭になってほしいというところから、日本の優れた技術をうちの国の社会インフラに生かしてくれ、世界一の対外純資産を持つ日本はもっとうちの国の投資してくれ、日本の伝統工芸の持つ優れた魅力を世界に発信してくれ・・・、こういう声は枚挙に暇がないのです。