株式市場から見た衆院選、アベトレード(自民党アベ相場)は外国からの圧力

 先月、解散・総選挙が決まって以降、株価はほぼ一本調子で上昇してきました。そしてこの一連の値動きについて、選挙期間中、メディアでは、この一連の株価上昇は自民党政権誕生への期待の表れだと報じられました。しかし、実態はどうだったのでしょうか? 今回は、解散・総選挙の決定から投開票までの動きについて分析します。

 結論から言いますと、株価が上昇し続けたこの1カ月間、株を買っていのは、ひたすら外国人投資家です。一方、投票権を持っていた日本国内の個人投資家は、その逆で、ひたすら売り続けたのです。

 東証が発表している投資家別売買動向によると、解散・総選挙が決まってからの1カ月間、アメリカのヘッジファンドを主力とする外国人投資家の買いは、凄まじいものがありました。この間、彼らは、日本株を猛烈に買い続けたのです。この1か月で、日経平均株価は実に1090円も上昇したのですが、この売買の内容を取引時間別に見ると、非常に特徴的なことが解ります。以下は、1090円の上昇のうち、日本時間での上昇分と、外国時間での上昇分の内訳です。

   日本時間   +270円
   外国時間   +820円

 これを見れば一目瞭然、株価の上昇の実に8割は、日本の取引が閉まっている外国時間中のものなのです。しかし、日経新聞が独自に選定した225銘柄で構成される日経平均ではなく、射程の範囲を、およそ1700銘柄ある東証1部全体に広げてみると、この傾向はもっと露骨になります。指数で表現されるTOPIX(東証株価指数)は、この1か月で82ポイント上昇したのですが、以下は、そのTOPIXの内訳です。

   日本時間   −3ポイント
   外国時間   +85ポイント

 つまり、TOPIXに関しては、こと日本時間に限っては、株価は上昇どころか逆に下落しているのです。外国時間「+85」に対し、日本時間「−3」、同じ東証1部の取引でも、これほどに違いがあるのです。

 という訳で、メディアは、自民党政権誕生への期待から株価は大幅な上昇を続けていると報じてきましたが、しかし日本時間に限定してみると、東証1部は、下落しているわけです。東証は、この1か月における国内の個人投資家(くどいようですが、彼らこそは衆院選有権者です)の売買動向も発表していますが、それによると、国内の個人投資家は、解散・総選挙が決まって以降、圧倒的に株を売り続けたことが解ります。言っておきますが、単なる売りではありません。圧倒的な売りです。有権者たる国内の個人投資家たちは、解散・総選挙が決まって以降、ここぞとばかりひたすら売り続けたのです。なのに、指数のマイナスがたった3ポイントにとどまっているのは何故かというと、答えはカンタンで、国内の個人投資家が取引に投じた額よりも、ヘッジファンドを中心とした外国人投資家が扱う金額の方が、はるかに上を行くからです。

 つまり、自民党安倍総裁の発言からアベトレードとも呼ばれたこの1か月の相場展開は、とことん外国人投資家によってつくり出されたものなのです。では、彼らはいったい何故ここまで日本株を買い続けたのでしょうか? 考えられることは、主に次の2つです。

 ①外国人投資家、とりわけアメリカのヘッジファンドは、自民党政権が誕生すれば経済は良くなるという期待感を意図的につくり上げるために、わざと株を買い続けた。つまり、日本の市民に対し、自民に投票するよう煽るための買いだった。

 ②外国人投資家、とりわけアメリカのヘッジファンドは、選挙までの1か月をイベントとみなし、為替の操作と併せて、ひたすらマネーゲームをおこなった。自民党アベ総裁の過激な金融政策の発言は、彼らがイベントの期間中にがっぽり儲けるための単なるネタに過ぎなかった。

 そして選挙が終わってはっきりしたことは、この①と②の両方だったということです。つまり、自民党政権を誕生させるための煽りでありながら、それでいてその煽りの際の売買そのものでも儲けを得ようというものです。しかし、驚くにはあたりません。金融マフィアとはそういうものです。マネーゲームのための都合のいい政権を生み出すための煽りなのですから、その過程においてもマネーゲームを実行するのは彼らの感覚からすれば当然のことなのでしょう。ともかく、はっきりしているのは、解散・総選挙が決まってから投開票を迎えるまでの1カ月間の相場は、ひたすらヘッジファンドを中心とする外国の金融マフィアの作為によって織り成された虚構的なものだったということです。

 という訳で、今後、暫くの間は、アメリカのヘッジファンドを中心とした金融メフィアの手によって、日本株は荒らさせる恐れが非常に高いです。当然警戒は必要ですが、とはいえ、株式市場はオープンな場である以上、この場合は防衛の手立てはまったくありません。市民としては、安易な株高に踊らされることなく、来年夏の参院選に向けて、これまであまり明らかにされてこなかった真実を少しずつでも共有していきながら、デモをはじめ様々な手段を通し、民意を高めていくことが肝要かと思います。