新たなマネーゲームの始まりか? 金融マフィアの動きと衆院選の裏にあるもの

 衆院選の投開票を数日後に控えた12月13日、アメリカからいささか狂気的な金融政策のニュースが飛び込んできました。アメリカの中央銀行にあたるFRBが、長期国債購入の継続・拡大と共に、現在行っている超低金利政策の実施期間について、失業率が6・5%を下回るまで続けると発表したのです。これは恐ろしく異常です。中央銀行が金融政策を行う際、具体的な目標として失業率の数字を挙げるのは極めて異例であり、もちろんアメリカにおいては歴史上初めてのことです。そしてこの発表を受けて為替相場は大きく動いたのですが、その動き方もまた異常でした。

 通常、FRBが金融緩和政策を打ち出すと、為替相場では、円高ドル安が進みます。当たり前です。ドルの供給量が増えるということは、それだけドルの通貨価値が落ちることなので、だから普通ならドルは売られ、円が買われます。ところが今回に限っては完全に真逆の動きを見せ、円安ドル高が進みました。それも、大幅に進みました。これは極めて異常な動きです。

 この大幅な円安の説明としては、FRBの発表を受けて、衆院選投開票の数日後、12月20日に金融政策決定会合を行う日銀もまた更なる緩和政策を打ち出してくるのではないか、という期待からの円売りというのが一部金融メディアの間で言われているのですが、しかしそれはまずありえません。何故なら、FRBの緩和発表を受けた後というのは、今回に限らず毎回日銀に対する緩和期待は膨らむのであり、それはいつものことに過ぎません。また、仮に今回は日銀もFRBに呼応して緩和策を打ち出したところで、その手口はせいぜい資産買い入れ総額の10兆円積み増しあたりがいいところで、FRBの大規模金融緩和に比べれば大したものではないのです。なのになぜ今回はこんなに円安が進んだのでしょうか?

 別の理由として、今回のFRBの発表を受けて、米国債の利回りが上昇したことを挙げるアナリストがいます。これは確かにそうなのです。円のレートは、米国債の利回りと相関関係にあり、米国債の利回りが上昇すると円は下がる傾向にあります。しかし問題は、じゃあ何故今回米国債の利回りが上昇したのかということです。FRBは大規模な国債購入を行うと言っている以上、普通なら米国債の利回りは下がるものです。アメリカに限らず、中央銀行が大規模な国債の購入を発表すると、通常国債の利回りは下がります。しかし今回は、何故か逆の動きを見せ、中央銀行国債を大量に買うと言っているのに、国債の利回りは上昇しました。明らかにおかしいです。

 そもそも、金融市場での奇妙奇天烈な動きは、11月の半ば頃から始まっています。この時期、ギリシャの追加支援先が先送りになり、またスペインも毎度のことでEUに支援要請するだろうと期待されながらそれをしないなど、債務危機にある国をめぐってユーロ市場は不安定感に満ちていました。なのに、まさにこの時期から、ヘッジファンドギリシャ国債の購入やスペインの不動産への投資を始めたのです。これも理解に苦しむ動きだったのですが、これを受けてのものなのか、11月半ば以降、ユーロ株はドンドン上昇し、特にフランス、ドイツの株価はうなぎ上りに今年最高値を更新しました。

 そう考えると、これは日経平均株価の動きと連動しているとも言えなくもありません。日本の場合も11月の半ばに突如衆議院の解散が決まり、その後日経平均株価は上昇の一途を辿りました。

 ここで注目すべきは、ギリシャなど南欧の資産を買っているのも、日本株を買っているのも、円を売っているのも、いずれもその主力はヘッジファンドだということです。そして、ヘッジファンドこそはまさに金融マフィアの最たるものです。

 そうして見ると、ここ一連の動きの発端となっているのは、アメリカ大統領選の結果が出て、オバマの再選が決まった後からのことだ、という事実に気付きます。というより、厳密に言えば、共和党ロムニーの敗北が決まって以降、ヘッジファンドがかつてないほど妙な動きをし始めた、そう見るのが自然でしょう。疑いなく、ロムニーが大統領になっていたら、あんなことをやろう、こんなことで儲けよう、そう画策していたに違いないマフィアどもが、彼らにとってはまさかのロムニー敗北を受け、数日程沈黙していた後、仕切りなおして新たな作戦を決定し、実行に移した、そう見ることは十分可能なように思われます。

 周知の通り、金融マフィアが共和党政権下で儲けようとする案件は、ろくでもないものです。核開発疑惑のイラン情勢を執拗に煽って原油価格を釣り上げて儲けようとか、彼らの企てはとにかくろくでもないです。しかしそれらがロムニーの敗北で無理になったので、プランBとでもいうのか、それを実行に移し始めたのだと、そう見ることは十分可能なように思われます。

 してみれば、この選挙期間中になされた日本の大手メディアによる世論調査、ホントにそこまで自民党って支持されてるの? という世論調査も、やつらマフィアどもが裏で糸を引いているものと見えなくもありません。つまり、共和党が負けた分は、日本に自民党右派政権をつくって、そこで儲けさせてもらおうと、そしてそのためには、自民党が政権の座に就くと日本の経済いかに良くなるかという期待感を煽るために、意図的に株価を釣り上げ、しかもその株価操作自体でも儲けようと、そういう算段がなかったと誰が断言できるでしょうか? ともかく、我々に出来ることは、ユダヤロビーの暗躍をはねのけ、オバマを再びホワイトハウスに送り込んだ(というよりロムニーを敗北に追い込んだ)アメリカの市民と同様に、今回の衆院選に向けて、良識をもって投票に臨むことでした。しかし、結果はご覧の通りです。
 
 とはいえ、今後は来年の夏に参院選が控えています。とにかく、我々の取るべきスタンスとしては、まずは大手メディアの情報に踊らされないことであり、そうして何が起ころうと、どのような煽りがなされようと、あくまで冷静に対処しつつ、市民として相互に連帯を深めていくことでしょう。そもそも、日本の大手メディアがアメリカの圧倒的な支配下にあるというのは、沖縄やTPPの報道で一目瞭然であり、今更驚くほどのものではありません。ただ、そのなかでもヘッジファンドというのは、狡猾の度合いで群を抜いています。彼らは扱う金額からして桁外れであり、そのカネをもって金融市場で大規模な空中戦を展開します。そこは注意が必要ですが、しかし彼らは金融市場のはるか上空という市民の目が届かないところで作戦を遂行しています。我々としては、いまはとにかく来年夏の参院選で政治の場に良心を叩き付けることに全力を注ぐしかないでしょう。そしてそのための戦いは、既に始まっているのです。